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芭蕉

 祖国をいつ離れた
 芭蕉の夢哀れ

 南国に向かう燃えたぎる郷愁
 おまえの魂は修女よりも侘しく

 夕立に恋するおまえは情熱の女人
 わたしは泉の水を汲んでその足にそそぐ

 夜はもう寒い
 ふたたび おまえをこの枕元に置こう

 わたしは喜んでおまえの僕となろう
 おまえの垂れさがるチマの裾で われらの冬を
 おおい隠そう

1936

金東鳴(キム・ドンミョン、1901―1968) 初詩集に「わたしのコムンゴ」(1930)。代表作はこの詩の他に「わたしの心は」など。遠い南国から流れついた芭蕉に、国を奪われた己の運命を重ねる詩人、その想いが伝わる。(訳・康明淑)

[朝鮮新報 2003.7.16]