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もうひとつの故郷

 故郷へ帰ってきた夜
 わたしの白骨がついて来て同じ部屋によこたわった

 暗い部屋は宇宙へ通じ
 空からか 音のように風が吹いてくる

 暗闇のなかできれいに風化していく
 白骨をのぞき見ながら
 泣いているのは わたしなのか
 白骨なのか
 美しい魂なのか

 こころざし高い犬は
 夜を徹して暗闇に吠える
 暗闇に吠える犬は
 わたしを追いたてているのだ

 行こう 行こう
 追われる人のように行こう
 白骨をそっと残して
 美しいもうひとつの故郷へ行こう

1941

尹東柱(ユン・ドンジュ、1917―1945) 詩集に「空と風と星と詩」。生まれ故郷は北間島(今の中国吉林省延辺付近)。解放を目前にした1945年2月、福岡刑務所で獄死。「行こう、行こう」と叫ぶ詩人の声が聞こえてくる。(訳・康明淑)

[朝鮮新報 2003.6.11]