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雨の音

 雨が降ります
 夜は静かに羽をひろげ
 雨は庭先にささやきます
 そっと鳴くひよこのように

 ゆがんだ月は糸屑のよう
 星からも春が流れるように
 あたたかい風が吹くと
 きょうは この暗い夜に雨が降ります

 雨が降ります
 待ちわびた客人のように雨が降ります
 窓をあけて出迎えようにも
 見えないよう ささやきながら雨が降ります

 雨が降ります
 庭先に 窓辺に 屋根のうえに
 だれも知らない嬉しいたよりを
 この胸につたえる雨が降ります

「廃墟以後」誌(1924)
        
朱耀翰(チュ・ヨハン、1900―1979) わが国に近代的な自由詩を取り入れた詩人とされている。代表作に「プルノリ」。遠く80年前の静かな春の夜、詩人にささやきかけた雨の音が聞こえてきそうだ。(訳・康明淑)

[朝鮮新報 2003.5.14]