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美しき山河は慟哭する

 東の空が白んでくる
 白い朝霧の中から草葺の家が
 一軒 一軒と浮かび上がる
 一番鶏が鳴く
 ああ、美しき我が山河よ

 そこに 十一名の兵士が
 息をつめ身をすくめ
 真っ黒な山に向かって逃れてゆく
 凄絶なその後姿よ

 追うもの
 追われるもの
 それは誰なのか
 嘆き悲しむ父母を故郷に残し
 ああ、美しき山河よ 答えておくれ!

 血色の太陽がのぼり
 殺戮が始まる
 親しい隣人が戸を閉ざし
 同胞 兄弟が仇敵となり
 麗しの山河は血に染まりゆく

 暗闇のなかに消え去った
 息子よ 娘よ
 ああ、美しき山河は慟哭する

柳春桃(リュウ・チュンド) 詩集「忘れ得ぬ人々」(2002年刊)に収録。

[朝鮮新報 2003.3.26]