熱気溢れる会議場で
だれかの手が私の肩をやさしく包む
振り返る私の右頬に彼の頬が触れ
私は思わず彼の肩を抱く 白髪の老人と口元にあどけなさの残る老婦人
とのあの抱擁は
若い日ともに戦った同志とのなつかしい再会
だろう、と
人々はほほえましく眺めたに違いない 彼は同志一人ひとりと再会を喜び合い
私はさわやかな風が触れたように
頬に残る彼の温かい感触を感じながら
手のひらでそっと右頬を覆っていた その昔「トンム、あなたを愛します」と言い
残し
死地へ向かったあの人
歴史の渦巻きのなかではるか遠く去ったあの人
青春を捧げ断崖の淵まで突き進んだあの人
烈しい戦闘で死んだかも知れない
捕虜にされて長い長い獄中暮らしを
強いられたかも知れないあの人 ほんの一瞬 そのまなざしに捕らわれ
憐憫の情が長い歳月私の胸をむしばむ 若い革命家の燃えたぎる情熱は
五十年の歳月を超えに超え
優しい温もりになり
今、あの白髪の老闘士の穏やかな抱擁として
蘇ったのか 柳春桃(リュウ・チュンド) 1927年 朝鮮慶尚北道生まれ。50年、北朝鮮義勇軍として朝鮮戦争に参加。逮捕、釈放を経て51年、ソウル女子医科大学に復学。この詩は詩集「忘れ得ぬ人々」より。 [朝鮮新報
2003.3.5]
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