若きアーティストたち(11) |
グラスアーティスト・柳琴姫さん 美しく、もろく、繊細なガラス。ガラスは光を集め、通し、反射する。
神奈川県相模原市在住の柳琴姫さん(26)は、そんなガラスの魅力にとらわれた。幼い頃から物作りが好きだった柳さんは、手先の器用な母親のそばで、物心つく頃から手先仕事を楽しんだ。 秋田県生まれの彼女は、初級部1年生のときから親元を離れて東北朝鮮初中高級学校の寄宿舎に入る。大好きな美術の時間には、人一倍作品づくりに没頭する少女だった。 そんな柳さんがガラス職人を目指すようになったきっかけは、あるテレビ番組を見てのこと。真っ赤な水あめ状のガラスを、棒の先につけて、職人が吹く様を見たときに「すごい! 私もやってみたい!」と、彼女の目は釘付けに。高校に上がる頃には「もう、自分にはこれしかない!」と、決め込んでいたという。 書店に行っては本を買い、手探りでガラス工芸家になる道を探す日々。
「世間には、陶芸をする同胞は多いですが、ガラス工芸となるとあまりいない。学校の先生もそういうことはあまり知らなかった。でも、私はどうしてもガラス工芸をあきらめられなかった」 卒業後、1年間の勉強の末上京。東京の日本デザイン専門学校に入学した。クラフトデザインを専攻し、陶芸、金工、アクセサリーなど一通り手掛けた。「色々触れてみて、やっぱりガラスがおもしろい」と思ったとか。当時を振り返ると「ガラスが好きで好きで、四六時中ガラスのことばかり考えていた」。 その後は数年間の修行を経て、フリーのグラス・アーティストに。彼女の作品は、オブジェというよりむしろ、日常生活で使える生活品が主流を占めている。作品の特徴は、雨の雫や氷柱など、自然の姿を取り入れたものが多い。一輪挿しや小鉢、アクセサリー掛けなどの作品は、実用的でありながら、まるで語りかけてくるような愛らしさを持っている。 「生活の中で、ふと気がつくとそこにいるような、愛着のある作品を作りたい」というのが彼女の願いだ。 ガラスはとてもデリケートな素材。吹きガラスなど1000度以上もある飴状のものを、中心を保ちながら思い通りの形に仕上げていくのは至難の業。汗のしたたる夏場には、1滴の汗が作品を台無しにすることもある。 「ガラス工芸は温度との勝負。ひとつの作品はだいたい15分くらいで出来上がるが、釜に入れて、形を整えて、温度の調節をしながら、大事に大事に、かつスピーディーに作業をこなす」 柳さんが働いていた工房に、朝鮮学校の生徒たちが吹きガラスの体験をしにきたこともある。「子供たちに物作りの楽しさを知ってもらうのは嬉しい。在日もいろんな道に進めるんだということを知ってもらいたい」と話す。 昨年12月、東京都渋谷区の表参道で、友人と2人の作品展を開いた。展示された作品はすべて完売。次の作品展は、今年の夏、山口県で開かれる。(金潤順記者) [朝鮮新報 2003.2.26] |