カバン 一針一針 縫った小さなカバン
血と汗と
国を失いし同胞の悲しみと
苦しみがしみこんだカバン ぼろ切れ寄せ集め縫い合わせ
雨漏りの掘っ立て小屋 薄暗い電燈のしたで
夜を明かしてつくった小さなカバン 「小学校にあがるから
新しいカバンを買ってやりたいけど
この暮らしじゃ…」
オモニのやりきれぬ想い
縫い合わせてできた小さなカバン それは一年生の子どもには
あまりにも不釣合いなものだった
だけどそれは私の大事な宝物
その針の目一つ一つに
オモニの悲しみが、わが同胞の
血と汗にじむ歴史が刻み込まれている あれから五十年
今も手元に残る小さなカバン
カバンを見るたび
オモニのつらい独り言
聞こえてくるようで
わが同胞を窮地に追いやった
憎き者たちへの怒り
あふれ出す ハナタレ小僧の泣き虫
朝鮮人に生まれたことを恨みもした私が
今では頭に白いものがちらほら
子どもたちも育ち
ウリマル話し、
朝鮮の唄をうたい
チマ・チョゴリ着て
祖国のために人生の道を歩む
その姿をみるたび 私は小さなカバンのことを思い出す
そして子どもたちに何度も話す
朝鮮民族の悲しみ多き足跡と
今日の果てしなき幸せを
(1980年4月)
李徳鎬(リ・ドクホ) 李徳鎬作品集「太陽を慕い星を慕い」(2000年4月10日発行)収録。(訳・全佳姫) [朝鮮新報
2003.2.26]
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