今日私は、アボジと初めての旅行に旅立ちます
思えば
四十をすぎるこの歳までアボジと二人で
旅行をしたことはありませんでした 今日私は、アボジとともにふるさとへ行きます
親子の初めての旅行なのに
あなたはただ黙って寝そべっています
明るい光が満ち
五月の若葉がそよぐ
車窓の外、野原には
男のひとと子どもが立って話す姿が見えます
仲のよい親子の姿です
親子のそんな姿がたまらなくうらやましく
私もアボジと旅行をしたり
静かな駅の待合室で暖かなベンチに腰掛け
そよぐ五月の若葉を見上げ
コーヒーをのんだり
たわいのない話をしたり
手を握りしめたりしたかったけど
あなたはもうただ黙って寝てばかりいます
幾度となく怒ってむき出したあの目をつむっ
て、アボジ アボジの視線が怖くなくなったこの歳になって
今なら、
夕暮れに
一緒に家を出て
ふるさとの海辺を歩き
小さな屋台に寄って
焼酎でものみたかった
それすらもできずに逝ってしまったアボジ 今日のこの旅行は
アボジとの最初で最後の旅行になってしまいました (「七大文学賞受賞詩人代表作 1998」に収録)
パク・サンチョン 第30回韓国詩人協会賞受賞(1998年)。55年、全羅南道に生まれる。詩集に「愛をみつけるまで」「黙ってすごした冬の日の1日」「5679は私を不安にする」など。(訳・全佳姫) [朝鮮新報
2003.2.18]
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