かくも近き道があるのに どこか遠き道を廻りめぐった日もある
ここはトンヘ(東海)に近きところ 地図が繰り言たんまり吐き出す
つもる想いを、ぶつけよう われらの海岸から押し寄せしこの波間に
汽車はしゃがれた声を吐き、三等席に座った私は 直江津から新潟へ向かう道すがら
砂浜に押し寄せる波 ふるさと想う旅人は足を浸し
今も昔も海は変わらない ながく胸に秘めたしトンヘよ!
わがふるさと春のようすが目に浮かぶ 波間越え呼べば聞こえるところにいる
黒松のように曲がりくねったわが人生 全精力 をふりしぼり その体から噴出す水 もう一度のみにゆこう
(1947年「白民」より) 姜舜(カン・スン) 姜舜詩集(1964年発行)収録。(訳・全佳姫)
[朝鮮新報 2003.1.29]