そこが知りたいQ&A−米国は対朝鮮政策を転換したのか? |
Q ブッシュ米大統領は、朝鮮に対し「安全保障の文書化」に応じる考えがあると表明したが、朝鮮の立場は? A 「一顧の価値もない」と一蹴している。21日朝鮮中央放送が報じた。 朝鮮は多国間の「保障」を要求しているのではなく、あくまでも朝米間の不可侵条約締結を主張している。同時に対朝鮮敵視政策の撤回を求めている。朝鮮は、核問題は朝米間の問題だと一貫した立場を堅持している。 最近マスコミは米国の柔軟姿勢、立場緩和を強調して報じているが、中身をよく見ると対朝鮮政策が従来と何ら変わりがないことは明確だ。 ブッシュ米大統領は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれたタイで中国、南朝鮮の首脳らと相次いで会談し(20、21日)、6者会談の枠組みの中で「安全保障の文書化」に応じるとの考えを示したが、「北が核廃棄に関連して何らかの進展を見せることを条件に」(南・米首脳会談後の共同発表文)と前置きしている。これは従来の「先核放棄」を意味する。 また、米大統領がはじめて「文書化」を明言したと報じられているが、これは米政府高官が以前から言及していて、これについては朝鮮外務省スポークスマンが16日、「ブッシュ政府は最近、あたかも核問題を解決するために『譲歩案』を準備しているかのように世論を広めている」と指摘、「ブッシュ政府の実質的な動きは『譲歩』や『平和的解決』の論議とは正反対」だと非難した。 さらに、今回ブッシュ大統領が不可侵条約締結を明確に否定していることも従来と変わりはない。 関係国が米国の「柔軟姿勢」を外交的には「歓迎」していても、「中国では米国が進める解決策にも懐疑的な見方が強い」(20日付朝日新聞)のもこのためだ。 Q 朝鮮はなぜ朝米不可侵条約にこだわるのか。 A 朝米関係は朝鮮戦争以後も敵対関係にあり、まして停戦状態の極めて不安定な状態にある。米国が朝鮮を威嚇し続ける中で核問題なども発生した。 この現状を打開するため、朝鮮は昨年10月25日不可侵条約締結を提起し、米側が応じれば、「米国の安保上憂慮を解決する用意がある」と述べた。 またこれにこだわるのは、ブッシュ政権が執権するなり、94年10月21日の朝米基本合意文、00年10月12日の朝米共同コミュニケなど前政府時代にもたらされた合意をすべて無効化したことと関連する。それで、執権者が交代すると変わる文書でなく、相互攻撃しないということを確約した法的拘束力のある不可侵条約を要求している。 ケリー米国務省次官補が1日、「米国は朝鮮を攻撃しないという今までの約束を文書化することができる」と発言したことに対して7日発朝鮮中央通信は、「いかなる法的保証も与えられない紙切れに過ぎない」と一蹴している。 また、国際合意なしにイラク戦争を起こすなど単独行動主義に走っている米国に、強く警戒していることも事実だ。 Q 最近朝鮮外務省スポークスマンは、時が来れば核抑止力を実物で実証すると公言しているが。 A 朝鮮は今年1月の時点で、「われわれの核活動は電力生産をはじめ平和的目的に限られる」(1月10日政府声明)と規定していたが、その用途を変えた。 朝鮮外務省スポークスマンは2日の談話で、「われわれは米国の敵視政策によって生じた情勢に対処して…プルトニウムの用途を核抑止力を強める方向に変更させた」と述べた。 実際、9月3日平壌で行われた最高人民会議第11期第1回会議では、核抑止力の維持、強化を内容とする会議決定「朝米間の核問題に関連して朝鮮外務省が取った対外的措置を承認することについて」を全会一致で採択、「当該の措置を取ることを決定」した。すなわち国会にあたる同会議で、核抑止力強化を新たな段階に進める重大決定を下したのだ。 朝鮮は昨年11月、朝米基本合意文に明記されているKEDOからの重油提供中断を受けて、すでに昨年12月から核活動を再開し、3月の地点で8000余本の使用済み燃料棒の再処理を最後の段階で成功的に行い(4月18日、朝鮮外務省スポークスマン)、6月末までに再処理を終えた(3日、朝鮮中央通信)。 朝鮮が「決定」を撤回しないかぎり、「実証」は時間の問題と言える。 Q 核問題の解決のためには? A 8月末、北京での6者会談から2カ月が経つが次の会談が開催される見通しは立っていない。6者会談が10〜11月に再開されるとの世論に、朝鮮外務省スポークスマンは2日、「北京会談でも、それ以降も約束したことがない」としながら、「事実にまったく合わない根拠のないもの」と述べている。 朝鮮は6者会談について「百害あって一利なし」「これ以上興味も期待も持てなくなった」と評している。が、次回会談に参加しないとも言っていないし、「われわれは対話そのものに反対するものではない」(16日、朝鮮外務省スポークスマン)としている。 朝鮮は再三再四、「核問題は米国の対朝鮮敵視政策によって生じた問題」であり、「問題解決いかんは米国の対朝鮮敵視政策の放棄にかかっている」と強調している。 朝鮮が認められるレベルで米国が政策転換意志、不可侵条約締結意志を示せば会談も再開され、問題解決に向かっていくだろう。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2003.10.24] |