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大学受験資格、わたしはこう見る−識者4氏に聞く

 外国人学校卒業生の大学入学資格に関する文部科学省の法令改正を受け、各地の国立大学が来春の受験を希望する朝鮮学校生に相次いで入学資格認定書を交付している。この間、すべての外国人学校出身者への大学入学資格を求めて声を上げてきた4氏に今回の運動の評価、今後の課題について聞いた。(まとめ、李明花記者)

ユネスコ通し確認も

 文科省の「大学入学資格緩和策」は「朝鮮学校はずし」を法的に決定づけるもので、結果的に彼らは「チマ・チョゴリ切り」の側に回ってしまった。しかし今まで資格を認めてこなかった大学側が朝鮮学校出身者の受験を条件付きといえども認めたことは「一歩前進」だといえる。

 各大学が設けた審査基準を分析していて気になるのは、ほとんどの大学が必要書類として成績証明書を求めているということ。まるで推薦入学審査のようだ。資格があるかどうかと入学の合否の判定を取り違えている。書類を提出する朝高側も気をつけなければならない。

 認定書に1年間の有効期限をつけているところもある。これでは受験生の負担は軽減されない。一度認定を出した生徒の学校出身者は次回から学校単位で認めるべきだ。

 文科省が「困難」だとした朝鮮学校の「公的確認」については、政治とも距離があり、共和国、日本の両国が加盟しているユネスコ(国際連合教育科学文化機関)を通して確認するという手もあるだろう。(田中宏、龍谷大学教授)

法的地位の確立不可欠

 この問題を機に他の外国人学校と、文化祭や文科省への要請活動を共同で行ってきた。運動を通じて民族教育の実現を願うすべての当事者が、文科省が外国人学校を放置してきたために生じてきたさまざまな差別や矛盾点を再確認し、問題意識を新たにすることができた。

 しかし日本社会における外国人学校の認知度はまだまだ低いといえる。差別の是正に向けて当事者間の結束をいっそう深め、その存在を世間に広くアピールしていくことが大切だ。そのためにも2年前から東京で行っている絵画展はもちろん、地域行政も巻き込んでの合同行事などを通し、ネットワークを強化していきたい。

 外国人学校の法的地位を確立し、税制優遇など共通する問題を解決していくためにも日本政府は新しい法案を制定し、民族教育を受ける権利を保障すべきだ。(李昌興、東京民族教育対策委員会事務局長)

法廷闘争も検討中

 この問題をめぐり結成された「弁護士有志の会」では文科省と国立大学双方に対し、法的手段を盾にすべての外国人学校の大学入学資格を認めるよう判断を迫った。これらの動きは、今回の運動展開の過程、結果に大きく影響したといえる。

 各大学の個別審査が実質学校単位認定となるかは未知数。定着するまでの何年間かは朝鮮学校生の不安を拭い去ることはできないのではないか。そのような不安を少しでも軽減させるために「有志の会」では、各大学が発表した個別審査基準の分析を急ぐとともに、受験生の負担とならないような審査基準のモデル書式を作り文科省、国立大学に意見書として提出するなどして、来年につなげていきたいと考えている。

 受験資格問題を機にした運動の盛り上がりを引き続き維持していくためにも、民族教育を受ける権利を求める法廷闘争も検討中だ。(金舜植、外国人学校、民族学校の問題を考える弁護士有志の会)

審査基準、是正の必要も

 ネットで呼びかけた国立大教員の声明には延べ1500余人が賛同し、多くの教員自らが主体となって積極的に動いた。また、民族教育についてあまり関心を持ってこなかった教員たちが目を向けるきっかけにもなった。

 今回各大学で新設された個別審査により、来年からはほぼ自動的に朝鮮学校生の入学資格が認められることになると思うが、一部の外国人学校を差別しており不十分だという思いに変わりはない。文科省はだめだと言っているが、朝鮮学校を学校単位で認めると大学が明らかにすべきだ。そうすれば、依然入学を認めていない多くの公私立大の動きを促すことにもつながるだろう。

 審査基準については学習指導要領に準じているかを基準としている大学もあり、将来的に問題が生じる可能性は否めず是正が必要だ。声明賛同教員にネットで問題点を提示し、審査基準における国立大学全体の改善を呼びかけたい。(水野直樹、京都大学教授)

[朝鮮新報 2003.10.14]