〈投稿〉 北京で知った「チチハル」事件 |
今も続く旧日本軍毒ガスの被害 北京に留学して2年になる。毎年8月と言えば、全世界で第2次世界大戦の悲劇と、加害国への恨みが思い出される時期だが、その責任を追及すべき事件が、先月、中国東北地方の「チチハル」という所で起こった。 事件は、中国民間人があるドラム缶を触って、重い病気におかされ、死亡するというものだった。今回43人が感染して入院し、1人が死亡した。それはかつての日本帝国軍が、降伏後、中国から逃げるときに埋めていった化学兵器だった。 現地のテレビで見たところによると、病気の症状は時間がたつにつれて皮膚全体が膨れ上がり、重度のケロイドのように変化して、死んでいくものだった。 そのドラム缶には、毒ガス(芥子気)が込められており、少し触れただけでガスが血管を通じて体内に入り込んでしまうという。この毒ガスはかつてあの「関東軍第731細菌部隊」の双生姉妹部隊と呼ばれた「関東軍第516毒気部隊」によるものだった。 日本の調査団も派遣され、調査を行い、これを認め、日本は中国に1億円の慰問金を払ったという(日本政府が賠償金、慰謝料としてではなく「慰問」の肩書きでお金を払った、という事は、本質的には罪を認めていないと思われる)が、これにはこれから中国に治療に来る日本人医師たちの諸経費なども含まれており、とうてい足りるものではないという。 より大きな問題は、50年以上たった今でも、中国のいたる所でかつての日本軍が埋めたり隠した化学兵器などが、何らかの形で、民間人に被害を与え続けているということである。 現在、中国各地に約200万個の化学兵器が埋められているという(中国政府は200万個、日本政府は70万個と主張)。このような被害は確実にこれからも起こり続けるだろう。また、もう1つ問題なのは、兵器を見つけても、それを安全に撤去する技術が中国にはまだないということだ。だから民間人の土地でそれらが発見されても、そのままにしておくしかないらしい。 日本政府は、隠した化学兵器の場所を知っているにも関わらず、情報を何1つ提供していない。戦後のジュネーブ条約で、日本は中国に対して中国領土に隠した化学兵器のありかをすべて情報提供し、それらを撤去できるよう技術提供するよう約束されたにもかかわらず、その処置は50年たった今も1度も行われていないと言う。 今回化学兵器によって死亡した男性は、ある貧乏な家庭の父親で、まだ「死んだ」ことの意味さえ理解できない幼い子供を残してこの世を去った。ただでさえ貧乏な上に、大黒柱をなくした家庭には深い悲しみと日本政府への憎しみだけが残る…。 こんなテレビ番組を見ると本当に胸が痛む。と、同時に、日本政府の残酷さを改めて思い知らされる。 日本でも「万景峰92」号やイラク自衛隊派遣問題などが報道されていると聞くが、先の戦争に対する反省すらしていない日本の再武装化は、平和を願う全世界市民らの脅威となるだろう。(9月24日投稿。広島出身、現在北京に留学中。29、゙永間) [朝鮮新報 2003.10.6] |