〈大学受験資格問題〉 文科省方針の「限界」露呈 |
周知のように先月9月19日、文部科学省は外国人学校卒業生の大学入学資格に関する法令改正を行った。 この決定により、インターナショナルスクール、韓国学校など学校単位で認められる21の外国人学校と朝鮮学校など一部の外国人学校とを線引きする「新たな差別」が生み出された。 この間多くの同胞や弁護士、国立大教員をはじめとする広範な日本市民が文科省と国立大学に対し、すべての外国人学校に等しく入学資格を与えることを求めてきた。 文科省の措置はこのような世論を無視するものである。 関係者の1人は「1965年の文部事務次官通達以来なんら変わらない日本政府の民族教育差別政策がそのまま温存されてしまったことに怒りを禁じえない。日本政府は自身も批准している国連人権諸条約を遵守し、『教育の機会均等』の立場から政策を改めるべきだ」と指摘している。 また、ある同胞は「今回の文科省の決定に政治的意図を感じる。政治問題を教育の現場に持ち込むことは断じて許されない」と述べた。 ばらつく審査基準 文部科学省が行った外国人学校卒業生の大学入学資格に関する法令改正を受け、3日までに全体の39%にあたる32校が朝鮮学校生に入学資格認定書を交付したことが代理人の弁護士グループの調査でわかった。正式決定ではないが認定の方向でなんらかの連絡があった大学も32校に上っている(【注】4年制国立大学は10月1日の10組20大学の統合で83校になった)。 「今まで資格を認めてこなかった大学側が朝鮮学校出身者の受験を条件付きといえども認めたことは『一歩前進』といえる」と龍谷大学の田中宏教授は語る。 しかし、文科省が朝鮮学校など一部の外国人学校出身者らの入学資格認定を各大学に丸投げした結果、学習指導要領に準じる教育内容かどうかを認定基準の1つとしていたり、成績証明書の提出を求めるなど審査基準にばらつきが見られるのも事実だ。 代理人申請してきた「外国人学校、民族学校の問題を考える弁護士有志の会」の金舜植弁護士は大学側の対応について、「文科省方針の限界が露呈した結果」と語る。 例えば、認定を決めた金沢大学では個別審査基準として、文科省が専修学校高等課程卒業者に大学受験資格を認める際に定めた要件(総授業時数が2590時間以上など)を準用することを決めた。審査方法としては成績証明書などの提出を求めている。 金弁護士は、「基準として専修学校方式を準用するならその認定方法である、形式的な取得(予定)単位数などを示す卒業(見込み)証明書の提出だけでよいのでは」と述べながら、「このような問題は民族教育を認めようとしない文科省の頑なな態度を変えない限り、是正されないだろう」と指摘する。 今回、教育権利運動を推進してきた同胞事務局では、「民族教育差別撤廃を求めたたかってきたすべての同胞と各界各層の日本市民に感謝を表する」としながら、「民族教育の全般的な権利の確立に向けてこれからも同胞はもちろん理解ある日本市民と手をたずさえたたかっていきたい」と述べた。 大学受験資格問題を機に盛り上がった運動を次のステップへつなげていくための新たな取り組みが求められている。(李明花記者) [朝鮮新報 2003.10.4] |