日朝首脳会談1周年記念講演会出演者の発言内容 |
既報のように、「日朝平壌宣言と6者会談」と題する日朝首脳会談1周年記念講演会が12日、日朝国交促進国民協会の主催で東京の自治労会館で行なわれた。小此木政夫慶応大学教授、姜尚中東京大学教授、藤沢房俊東京経済大学教授、和田春樹東京大学名誉教授らが朝・日問題、6者会談などをテーマに講演を行なった。発言の内容を抜粋、紹介する。(まとめ、姜イルク記者) 政府、メディアが責任を 平壌宣言は、アジアでの紛争を予防するという認識のもと、日朝間において過去、現在の問題を包括して解決する内容になっている。今読んでみても、宣言はたいへん良くできた文書だと思う。 拉致問題で、多くの人が亡くなったという衝撃と、期待の上昇で、日本はこの程度ではダメだと朝鮮に高く要求しすぎた。日本は過去、現在の包括的解決において、過去の討議を拒絶、棚上げしているが、これでは北は交渉の必要性を感じられない。交渉中断は当然だ。過去の討議だけでもしていれば、チャンネルが持て、拉致問題の解決もありえたのではないか。政府もメディアもこれを国民に言うべきだ。知っておきながら言わないのは責任回避だ。(小此木政夫慶応大学教授) リアリズム回復せねば 1年を振り返ってみると、日本の外交にリアリズム(現実主義)が欠けている。だから日朝間の進展がなかった。交渉のドアは半分開いたが、その貢献者を国賊呼ばわりし、テロをあおっている。日本の国益をそこなう反国家的行為と言っても過言ではない。 日本外交の欠陥は、メディアによって世論が国内で増幅され、政局に連動して最終的に外交指針が決まる、いわば外交の基本がねじ曲げられていることにある。き然とか原則という言葉で強硬姿勢を見せて、問題解決ができないことによって権力が維持されていることにも注目したい。 日本は現実に戻って、例えば拉致問題の解決とはどこまでをいうのか具体的に示し、過去の清算のメドを立てて交渉に臨むべきだ。(姜尚中東京大学教授) 信頼構築で支援地を拡大 今年3月と7月に訪朝した。支援協力者に対し報告の義務があり、物資が軍に流れているとの報道を信じている人もいるため、窓口になっている対外文化連絡協会(対文協)に支援物資を必要な所に直接届けたいと提起した。 結果、水害対策委員会が指定した所に行くことができた。事情は非常に変わってきている。以前は自由に行くことができなかったが、信頼関係が築かれていく中で、支援の場所が地方に広がっている。 私はひもじい思いをした世代だが、そういう人たちが隣の国にいる。そうした人を救うことは人権問題であり、私たちに課せられた義務だ。今後、日朝関係を下の方から支えていきたい。(藤沢房俊東京経済大学教授) 約束違反は望ましくない 一方が一方に対して最終通告を出すというようなやり方ではいけない。 外交において4大原則は、信頼を築く、一貫して約束は守る、双方が尊重する、合意と和解の精神を貫く−である。 信頼もなければ、和解の精神もなかった2国間が交渉に臨むのだから、これを考える必要がある。日本政府の約束違反は望ましくない。 拉致被害者の意志は尊重されるべきだ。子どもたちは朝鮮に帰属意識を持っていると考えるのが普通で、問題は複雑。米国脱走兵の日本永住問題なども含め、彼らのことを真剣に考える必要がある。 一方朝鮮は、拉致問題は解決済みと言っている。こういう状況を打開し解決するのが外交だ。(和田春樹東京大学名誉教授) [朝鮮新報 2003.9.29] |