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多民族が共生する社会を−日弁連など共催シンポジウム

 日本弁護士連合会、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会が12日、共催したシンポジウム「多民族、多文化の共生する社会をめざして」(東京都千代田区の日弁連弁護士会館第一東京弁護士会講堂)。日本社会の右傾化、排外主義がかつてないほど高まっている中、民族的マイノリティーの子どもたちの現状と課題について考え多文化共生の実現を目指そうと行われたもの。田中宏龍谷大教授の基調報告後、東京朝鮮中高級学校の高始徳教員、ペルー人学校「ムンド・デ・アレグリア」の松本雅美校長、民族教育文化センターの金光敏事務局長、日弁連人権擁護委員会の吉井正明弁護士らが出席し行われたパネルディスカッションではさまざまな意見が交わされた。

 杉尾健太郎(「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会」代表)、丹羽雅雄(「外国人学校、民族学校の問題を考える弁護士有志の会」共同代表)両弁護士の司会で進められたシンポでは、@マイノリティー教育と子どもたちへの差別と暴力A民族教育、母語教育の現状と課題B人種差別への規制と救済の現状と課題―をテーマにさまざまな意見が交わされた。

 基調講演を行った田中教授は近年、在日外国人の増加が著しい日本社会がその現実を直視することなく、自国民中心主義を貫いてきたため、現在にいたるまで外国人に対する差別は一貫して減少していないことを実例を挙げながら指摘。「日本は本当に人を大事にしない国。違いを認め合う社会を実現するには、内と外(日本と他国との関係)、今と昔(過去と現在)の問題として考えることが大事だ」と述べた。

 つづいて行われたパネルディスカッションでは、まず東京朝高で高3進路指導を担当している高始徳教員が大学受験資格問題に関し、「朝鮮学校生は学校単位で認められないため、各大学の個別審査を受け、入学資格認定書をもらわなければならない。本来なら受験生は1月に行われるセンター試験の結果をもってどの大学を受験するかを最終的にしぼるものだが、同試験を受けるには認定書が必要なためその作業を試験前にしなければならないということになる。万全を期すため希望するすべての大学の認定書をもらうとなれば、手続きは大変煩雑になる」と語り、面倒を避けるため引き続き大検を取得する受験生も出てくるだろうと指摘した。

 そして「日本政府の外国人学校政策は、60年前と何ら変わりない。いつまで、どこまでたたかい続けなければならないのか」と問いかけた。

 今年2月、静岡県浜松市に開校したぺルー人学校「ムンド・デ・アレグリア」の松本雅美校長は次のように語った。

 「校名のスペイン語は『喜びの世界』という意味。さまざまな理由から教育を受ける権利を奪われている子どもたちに学ぶ喜びを感じてほしいとの思いからつけた。まだ各種学校の認可すら受けていない無認可校で運営は本当に大変だが、朝鮮学校が日本社会の中で差別とたたかいながら権利を勝ち取ってきた実績を参考にしながら子どもたちに学ぶ喜びを与えたい」

 日本の公立学校に在籍する在日同胞の子どもたちに民族教育の機会を与えようと、民族学級の設置とその制度保障に務める運動を続けている民族教育文化センターの金光敏事務局長は、「こどもたちをこれ以上窮屈な立場においてはならないし、誰一人として1人ぼっちにしてはならない。そのためにも政府をはじめとする日本社会は『人間としてのまなざし』を忘れないで」と呼びかけた。

[朝鮮新報 2003.9.24]