〈月刊メディア批評〉 「頑迷、意固地」なのは朝日新聞 |
朝日新聞の8月28日夕刊1面に載った「素粒子」の2本目に、「北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議。『カクをお捨てよ』『ヤクをやめな』『ラチをどうしてくれる』。まるで町内の困り者を囲んで隣近所こぞって改心を迫るの図だ。聞く耳をもっているか。」という記事があった。 私はすぐに朝日新聞に電話で抗議した。読者応答室の男性は私の話をよく聞いてくれた。しかし、抗議の効果はなかったようで、翌29日の同じ「素粒子」には次のような記事が載った。 「拉致問題は『日本の約束違反』との主張を変えぬ北朝鮮。『幼稚園ならもっと殺せた』とうそぶく児童8人殺害で死刑判決の被告。隣国の頑迷さ。殺人者の意固地ぶり。そのかたくなな心を溶かすのは容易でない。もしすくって溶かせるものならば、仕掛け網でもいい、網がほしいくらいである。」 朝日新聞はこのような捏造、誹謗中傷記事を書いた筆者の姓名を明らかにすべきだ。こんな与太記事を書く、「頑迷、意固地」な記者は人民の仕掛け網で放逐したい。 朝日新聞は6カ国協議でも、日米の言い分ばかりを出した。小泉・ブッシュ両政権の広報紙のようだ。 マスコミ企業は、韓国大邱で開かれている第22回ユニバーシアード大邱大会の朝鮮女性応援団を「美女軍団」と呼び、テレビに出る自称文化人のオジサンたちは、「南北の融和をことさらに演出している」「韓国の若者がだまされている」などと絶叫している。 日本のマスコミは、「美女軍団」が日米両国の選手団入場の際にだけ、旗を振るのをやめたことを、「スポーツに政治を持ち込んだ」と非難していた。美女軍団という表記は不適切だ。在日朝鮮人の人たちが抗議したところ、一部放送局は女性応援団などと表現を変えた。 8月26日の朝日新聞の「天声人語」は「それまで熱烈とも見える声援を送っていたのにアメリカと日本の選手団の入場にはしーんと静まり返った。(略)北朝鮮からやってきた女性応援団たちのあまりに極端な振る舞いには驚いた。彼女たちの胸中は?と素朴に問いかけたくなるほどだ。(略)いずれも金正日体制への『忠誠心』から出た行動だろう。しかしそれが国際社会注視の下で行われるとき、逆に作用することがわからないのだろうか。『忠誠心』を発揮すればするほど「異様な国」だとの思いが国際社会に広がることが。」 朝鮮の若者がスポーツの祭典だからと言って、日本と米国の選手団に素直に声援を送れないのは、朝鮮当局による「思想管理」だけが原因ではなく、日本の過去約1世紀にわたる歴史に原因がある。 また、「南北の融和を演出している」と解説するのだが、日本のマスコミ人は、韓国と朝鮮の親善友好の輪が急ピッチで広がっていることを認識したほうがいい。 テレビ朝日のニュースステーションは8月21日、「美女軍団」を取り上げ、久米宏キャスターが「あの船がやって来ます」と言って、万景峰号の新潟入港が決まったことを伝えた。そして、久米氏が「これが実態です」と述べて、「中国との国境地帯にある北朝鮮での隠し撮り」と明言して、露天、一般家庭の自宅の中を映して、「街では強盗が横行している」「金があると分かると危ないので、白米を食べるときは厳重に鍵をかける」「物乞いの子供たちがいる」などのナレーションで延々と放送した。 久米氏は「美女軍団のように、血色がよく、すらりと背が高いスタイルのいい人なんてあの国にはいない。民衆は飢えに苦しんでいる。すべてが嘘っぱちなのだ」とコメントした。横に座る清水建宇朝日新聞編集委員が、「貧富の差が拡大している」「核開発で世界を脅して、瀬戸際外交に出ているのは、国内の経済が悪化しているからなのだ」ともっともらしく解説。清水氏はかつて警視庁担当記者時代、冤罪・ロス銃撃事件で無実の三浦和義さんを犯人視した社会部記者出身だ。いつから朝鮮問題や経済の専門家になったのか。 貧富の差が拡大しているのは日本ではないか。久米キャスターの1日あたりの出演料と清水編集委員の税込み年収を明らかにしたら、日本の真面目な労働者は怒るだろう。 日本の政府、極右による不当な妨害にもめげず、8月25日、万景峰号が新潟港に来て、翌日夕、出港した。テレビは下船、乗船の人たちを撮影して放映したが、船に乗るのはプライバシーだ。また在日朝鮮人の人々が、祖国の親類などに贈る物品について細かく報じていたが、何を送ろうとかってではないか。小泉政権とメディアは共謀して、つまらないことで改善命令を出して、出港を7時間も遅らせた。国際社会注視の下に、日本は「異様な国」だということを暴露した。(浅野健一、同志社大学教授) [朝鮮新報 2003.9.6] |