〈関東大震災−朝鮮人虐殺から80年〉 東京で真相問うシンポジウム |
「関東大震災80年シンポジウム―今、朝鮮人虐殺の真相と教訓を問う―」が8月25日、東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で行われ、同胞、日本市民ら約120人が参加した。シンポジウムでは、歴史研究家の山田昭次氏(立教大学名誉教授)、梓澤和幸弁護士(日本弁護士連合会人権擁護委員会・関東大震災検討委員会委員長)らが報告。シンポ当日、日弁連は国家が意図的に誘発した朝鮮人虐殺に対し、日本政府がその責任を認めて謝罪するよう求める勧告書を小泉首相あてに提出した。朝鮮人虐殺事件から80年の歳月が流れた今、事件の真相と教訓を改めて歴史的、法的視点から考えた。 問われぬ国家責任 「『様子を見て来る』と言って出て行ったアボジの親友がものの10分もしないうちに首をはねられ、その頭だけがやりの先に突き刺されていた。日本人が『わっしょいわっしょい』と言いながらかつぎまわっていたのをこの目ではっきりと見たんです」(目撃者、文戊仙さん=95、神奈川県横浜市在住=の証言)―シンポジウムに先立ち上映された
総連映画製作所作成のドキュメンタリービデオ「歴史を繰り返してはならない」での1場面だ。
関東大震災時に「暴動が起きた」などの虚偽事実を国家が流したことが朝鮮人虐殺を誘発し、6000余人が日本軍と民衆によって殺された。 シンポジウムでは、このような日本国家と民衆による2つの責任が様々な分析結果と法的根拠をもとに検証された。 あいさつした 総連中央の゙令鉉副議長は、「悲惨な過去の歴史から80年経った今でもその責任はまったく問われていない」としながら、日本政府の謝罪と補償による祖先たちの民族的尊厳の回復を訴えた。 山田昭次氏は報告で、日本政府が虐殺を直接誘導し、その国家責任を隠蔽(ぺい)した同事件の真相について、@当時の司法省は架空の朝鮮人暴動をでっちあげ、朝鮮人虐殺事件記事を発表A朝鮮人を虐殺した自警団員の一部を裁判にかけ、責任はすべて彼らにあるような外観を作ったB人心を自警団の朝鮮人虐殺に向けさせて、軍隊、警察の朝鮮人虐殺を隠蔽したC朝鮮人犠牲者の調査を妨害したり、死体を隠して朝鮮人に引き渡さず虐殺実態の隠蔽を図った―などの根拠を同氏が30年以上を費やし集めた資料をもとに具体的に検証しながら、「遺体はどれだけ殺したかわからないように焼き尽くされるなど、国家の責任は徹底的に隠蔽された。その原因には、日本人の精神的貧困さがある」と指摘。 梓澤和幸弁護士も、「軍部は、朝鮮人に対する過剰な恐怖心から法的根拠もないまま戦争、内乱、騒じょうの場合に出せる戒厳令を、自然災害である震災時に出している」などと国家の責任を明らかにした。 記憶し伝えること
「朝鮮学校児童、生徒への嫌がらせ、総連関連施設への銃撃、爆発物事件など、当時を彷ふつとさせるような許しがたいテロ行為がいまだにひん発している」 ゙令鉉副議長はこう指摘した。 有事法制の成立、マスコミの偏向報道、国会議員の朝鮮べっ視発言…。昨年の9.17以降、在日同胞に対する暴行、脅迫、嫌がらせが相次ぐ日本社会の現状に対し、報告者らは、再発の可能性もあると警鐘を鳴らした。 梓澤氏は、「再発の危険が増している今こそ、日本人自身が自戒の念を新たにし、国家として責任を認めて謝罪すべきだ。民衆は震災時の流言飛語のような言説にまどわされない自己訓練をしなければならない」と強調した。 また山田氏は、「戦前、戦後に日本人が建てた追悼碑には、『日本人が朝鮮人を殺した』と明記されたものは1つもない。民衆が虐殺の事実をまずはじめに認めてこそ、国家の責任を問えるのではないか」と民衆と国家の双方に責任があることを主張した。 シンポジウムに参加した朝鮮大学校教育学部2年の黄千純さん(3年制教育学科)は、「私たち自身の問題を解決しようと30年以上も努力を重ねてきた日本の方たちの誠意に勇気づけられた。このような悲惨な過去の事実をしっかりと記憶し、伝えていくことが私たち若い世代に課された役割だと思う」と感想を述べていた。(李明花記者) [朝鮮新報 2003.8.30] |