関東大震災時の朝鮮人虐殺と関連し、日弁連、小泉首相に勧告書 |
関東大震災(1923年9月1日)時の朝鮮人、中国人虐殺事件と関連し、日本弁護士連合会(日弁連)は25日、国(日本政府)は@軍隊による虐殺の被害者、遺族、および虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺の被害者、遺族に対し、その責任を認めて謝罪し、A虐殺の全貌と真相を調査しその原因を明らかにすべき―との小泉首相あての勧告書を提出した。同日、弁護士会館で日弁連が開いた記者会見で明らかにした。 今回の小泉総理にあてた勧告書は、虐殺事件の目撃者である文戊仙さん(95、神奈川県横浜市在住)の事件に関する人権救済申立に対し、日弁連人権擁護委員会が調査、今年7月にまとめた報告書に基づいたものだ。文さんは99年11月、洪祥進朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側事務局長を代理人として、日本政府に真相究明と謝罪を求めて申立をしていた。 報告書は、朝鮮人らに対する虐殺について「陸軍および政府に残る資料から軍隊による殺害の事実を確認することができる」と指摘。12の事例を挙げた。 また、朝鮮人虐殺の相当な部分は民間人、いわゆる自警団によるものであったとしながら、その根拠として、当時の新聞報道、刑事確定記録として保管されている刑事事件判決文、刑事裁判についての新聞報道などを列挙している。なかでも、自衛隊および警視庁の資料には、「民衆は自警団を組織して朝鮮人に対して、猛烈な迫害を加え」たなどと、はっきりと記述されている。 さらに、「朝鮮人による放火、井戸への毒物投入」は流言飛語であり、それらは、内務省警保局長発の打電など、行政機関による虚偽の事実認識の伝達によって広められたと原因を明らかにしている。 報告書は、自警団結成を指示し朝鮮人に対する暴行の動機づけを与えた点で、「国の責任は免れない」と結論づけたうえで、国の謝罪、再発防止措置などを求めた。 今も再発の可能性、政府に対応促す 会見で説明にあたった犬飼健郎日弁連副会長と梓澤和幸関東大震災検討委員会委員長は、最近も在日同胞に対する暴行、脅迫、いやがらせなどの被害が続いていることに触れ、「今の日本でも事件、災害が起きた時、流言飛語などで在日外国人に不当な民族差別、嫌悪感、排他的感情を引き起こす可能性があることを自戒すべきである。事件発生80周年の今こそ、国が事件発生の原因究明を調査し謝罪することによって、重大なあやまちを再発させないとの決意を内外に明らかにすべき時」だと強調した。 また梓澤委員長は、日本政府の反省、謝罪が大切だと強調し、今後、パンフなどを作成して広範な宣伝活動を行い、政府の対応を促していきたいと語った。(姜イルク記者) 河秀光朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側代表のコメント 河秀光朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側代表(総聯中央同胞生活局長)は25日、次のようなコメントを発表した。 本日、日本弁護士連合会は、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の調査を完了し、日本政府に対する勧告を行なった。 私たちはこの勧告を、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の被害者とその子孫のみならず、すべての在日同胞の民族的な尊厳回復につながるものとして歓迎する。 日本政府は、関東大震災時の朝鮮人虐殺から80年を経た今日まで真相究明を行なわず、その責任も明らかにしていない。 こうした中で昨今、被害者の子孫である在日朝鮮人に対する嫌がらせがエスカレートし、ついに朝鮮総聯と同胞金融機関に対する銃撃と爆発物による凶悪なテロ行為が連日繰り返されている。 まさにこのような様相は、日本社会に朝鮮人は怖いとの印象と恐怖感を植えつけた結果、朝鮮人集団虐殺がなされた関東大震災時の状況を彷彿させるものである。 今回の勧告は、関東大震災時の朝鮮人虐殺の問題点を歴史的な事実に基づき、その原因と責任所在を明確に示し、日本政府の責任を初めて法的な視点で明らかにしたものである。 私たちは、過去に対する真しな対応が朝・日両国のみならず国際的な平和を築く礎であり、日本政府が勧告を重く受け止め、これを契機にその責任を果たすことを強く求める。 [朝鮮新報 2003.8.26] |