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〈大学受験資格 国立大学から〉 安井三吉・神戸大学教授

 神戸大学でも多くの教官が「インターナショナルスクールの卒業生にのみ大学受験資格を与え、アジア系学校の卒業生には与えない」と発表した文科省の方針を批判する態度を表明した。「自由で闊達、国際性を重んじる」といわれる本学の特色からみても、大学独自の判断で受験資格を与えるべきだ。大学で学ぶ学力があるかどうか見るための入学試験に門戸を開かない対応を続けることは、毎年多くの留学生を受け入れている本学の国際性を問われることにもなるだろう。

 ちなみに本学では現在、800人近い留学生が学んでおり、その半数を中国人が占めている。中国人留学生は1980年代後半から急増したが、彼らが放つ学問への貪欲さやエネルギーは他の大学生にも良い刺激となっている。

 東洋史、とくに中国の近現代史を研究してきた。地元神戸には中華同文学校があり、同校が直面してきたいわゆる1条校問題にも関心を持ってきた。同文学校のような民族学校が、1条校と認められていないため自分の民族の言葉や歴史、文化を学ぶうえで、とくに財政上権利を保障されずさまざまな不利益をこうむっている。同文学校は中学までだが同校卒業生はそのほとんどが日本の高校へ進学するにもかかわらずだ。

 阪神大震災を機に中華同文学校、朝鮮学校、欧米系学校などで結成された兵庫県外国人学校協議会、たくさんの日本市民が声を上げ、兵庫県や神戸市などの地方自治体レベルでは、少しずつだが理解が深まっている。しかし、日本の私立学校と比べても助成金をはじめとする支援はまだまだ少なすぎると感じている。

 政府は過去の歴史的経緯から見ても、まずは朝鮮や韓国、中国などアジア系の外国人学校を真っ先に支援するべきではないか。このような方針が出てしまうことの背景には、歴史認識の欠如がある。文科省なり政府が過去の歴史について単に謝るのではなく、加害者という認識のもと、積極的にこの問題を解決していく姿勢が求められている。

 また、教育が国際情勢に巻き込まれていることについても非常に懸念している。拉致や核の問題など緊迫した国際情勢と日本のマスコミ報道が今回の問題の理由になっていないとはいえないだろう。日本がアジアとの関係をいっそう重視していかなければいけないこの時期に、スタートラインにすら立たせない差別をするとは時代錯誤ではあるまいか。

 日本の近隣諸国との間のわだかまりをといていくため、研究者としてこれからも歴史認識の共有にむけて努力していきたい。問題の解決は、アジアの各国と日本が気持ちよく交流していけるような未来を築くうえでの試金石の一つとなるだろう。(まとめ、編集部)

[朝鮮新報 2003.6.30]