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〈大学受験資格 国立大学から〉 坂元ひろ子・一橋大学教授

 文部科学省の大学受験資格問題についての今春の対応は、すでに指摘があるように、民族差別的で、公的に批准している人権関連の条約等に照らしてみるだけでも違反がみられる、ひどいものです。「教育の国際化」を目指すとしながら、恣意的に民族分断・序列化を謀っているとしか思えません。

 だからこそ国立大学教職員として民族差別に加担はしたくない、という思いで、受験資格を求める共同声明を3月に出しました。私も呼びかけ人の一人となりましたし、多くの賛同者をえました。

 試験をする側にとって、大学入学資格付与の指定を受ける要件を満たすような学校の出身者を、最初から排除するのでは試験の意味を問われることになります。また民族学校出身の教員にとっては、母校出身者を門前払いすることになり、つじつまが合わないし、屈辱的なことでしょう。

 国際化というなら、植民地支配と侵略戦争において日本が歴史的責任を負うアジアの人々との関係を築くべきだということはいうまでもありません。さらにアジア系か否かを問わず、各種の民族学校の分断、排除ではなく、複数民族が共生できる道をこそ模索すべきです。民族学校で学んだ学生を日本の大学に受け入れることはその点でも有益で、大学も豊かになるはずです。そうした環境でこそ、他の国家や民族への理解が高まり、自他への複眼的な批判力も養われるでしょう。

 私自身は反対した日の丸、君が代の国旗、国歌への法制化以降、教育政策が個人より国家戦略を優先する国家主義的愛国教育に傾き、日の丸、君が代がヒステリックなまでに強制されるようになったことに憂慮してきました。その意味でもこの問題を放置すると、とりかえしがつかなくなると危惧しています。

 国立大学では概ね、文部科学省の最終的な方針開示を待っている状態でした。そこへ、6月17日、一橋大学にも3名の朝鮮高校3年生の代理人として弁護士の新美隆氏らにより入学資格認定書交付申請がなされました。学生も民族学校出身者の一橋大への受験資格を求める連絡協議会を結成し、学生数数千人規模の大学ですでに1000名以上の賛同署名を集めて大学に提出しています。

 こうした状況を受け、私たち教官有志も受験資格認定にむけて取り組みを始めたところです。実現のために努力したいと思います。

[朝鮮新報 2003.6.26]