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「人種差別、性差別体現した帝国『日本』は今も継続」−シンポジウム「ジェンダーの視点から植民地暴力の歴史を振り返る」

 「女性・戦争・人権」学会第7回大会が15日、東京都新宿区の早稲田大学国際会議場で開かれ、シンポジウム「ジェンダー視点から植民地暴力の歴史を振り返る−3.1運動から関東大震災・朝鮮人虐殺へ」と学術報告が行われた。また、学会参加者らは日本政府に対し、日本軍性奴隷制の被害女性などに対し、誠実な謝罪と賠償を求める共同声明を発表した。さらに、シンポ参加者は「関東大震災80周年に際して」との声明を発表し、日本国首相、東京都知事など諸自治体知事に対し、虐殺の政治的・法的責任を取るよう強く求めた。

 午前の会議では学術発表があり、秋林こずえ日本女子大学教員の「軍事主義に挑むフェミニスト−沖縄『基地・軍隊を許さない行動する女たちの会』」、金エルリ・聖公会大学訪問教授の「ジェンダーと軍事主義−韓国の事例を中心に」と題する発表が行われた。

 秋林さんは発表の中で、「行動する女たちの会」(共同代表=高里鈴代・那覇市議)の主張について、「スペースとしての基地だけでなく、軍隊をもつことの意味について問い、軍事と目されることが社会において最優先される軍事主義に異議を申し立てている。そして家父長制が軍事主義の根底にあると分析している」と強調。

 金エルリさんは「韓国の軍事化」を分析し、理解する上で主要な概念として、動員と参与のしくみをイデオロギーの側面で掘り下げながら、次のように結論づけた。「韓国社会の軍事化は、北朝鮮の軍事的脅威を強調する反共主義を基盤とした国家安保、経済発展主義と忠孝思想と自己犠牲の儒教価値に支えられて創出された。こうした過程は、女性たちを排除、差別化した構造との相互作用を伴い、女性としてのアイデンティティーや性の役割、そして、ジェンダー関係を固着化し、利用するものだ」。

 午後の会議では「韓国・戦争と女性・人権センター」代表の尹貞玉元梨花女子大学教授があいさつに立ち、「2000年の『女性国際戦犯法廷』を成功させ新しい千年の平和の到来を期待していたが、それを嘲笑うかのように米国で同時多発テロ事件が起きて、さらにブッシュ政権によるイラク戦争が起きた。米軍によってフセインの銅像が倒された時もこのような暴力が朝鮮半島を脅かすとは想像もできなかった。太平洋をはるばる渡ってきた米国の暴力は韓日政府に支えられて、今、北朝鮮を脅かしている」と米韓日の北朝鮮包囲網に強い警告を発した。

 午後のシンポではパネリストの鄭鎮星・ソウル大学教授がまず「強制動員期の企業慰安婦研究」について発表。鄭さんは1920年代の日本における朝鮮料理店の形成について次のように指摘。「少なくない数の女性が20年代以降、日本の全域に拡散した朝鮮料理店に吸収された。ここでは料理も提供したが、ほとんどの場合、より重要な役割を果たしたのは買春だった。その原因は日本社会の朝鮮人に対するひどい差別にあった。こうした料理店は23年の関東大震災の後に朝鮮人集団居住地域が形成され、拡散されていき、その代表的地域は神奈川と大阪であった」。さらに鄭さんは尹貞玉さんの研究成果を引用しながら、「韓国女性たちは腹いっぱい食べて金儲けできるという日本人周旋屋に騙されて、朝鮮料理店に連れて来られた。周旋屋は女性たちを監禁して外部と遮断した上でお腹いっぱい食べさせて、市内見物させた後で、大金を巻き上げて売り飛ばしていた」と指摘。そして、彼女たちの年齢は15〜20歳、買春を強要されて、1人、あるいは集団的に自殺した女性も多かったと述べた。

 続いてパネリストの女性史研究家の金栄さんが「植民地の証言者としての在日朝鮮人」と題して発表。金さんは冒頭、一連の拉致報道に触れ、日本の常軌を逸した報道が毎日垂れ流される中で、「在日朝鮮人の多くは拉致事件への憤りを感じながら、一方で、日本社会への不信感や恐怖心を抱き、うちのめされていった」と強調。

 さらに金さんは近年頻発するチマ・チョゴリ事件について詳細な分析を行った。それによれば「パチンコ疑惑」(89年)「核疑惑」(94年)「ミサイル騒動」(98年)「拉致事件」(02年)の度に、チマ・チョゴリ切り裂き事件が起きて、特に「ミサイル騒動」以降、拉致事件に至るまで、「周辺事態法」や「国歌・国旗法」「改正住民基本台帳法」「有事関連3法」などが成立したと述べ、「共和国関連の疑惑や事件は、こうした日本の軍事国家作りの口実にされた」と主張した。

 最後に大越愛子・近畿大学教授が「関東大震災と日本人−朝鮮人、中国人虐殺とは何であったか」と題する発表を行なった。大越さんは「『朝鮮人』の大量虐殺とは『植民地帝国日本』の計画的な権力の技術の実践だという論点を導入することの重要性が、より明らかになろう。この論点からも『朝鮮人』虐殺とは『朝鮮人』を劣等視し、彼らの生殺与奪の権利を握るものとしての『日本人』という主体SUBJECT確立のための必要プロセスだったことが証明される」として、「『朝鮮人』を性化し、人種化して殺戮することで生成した『日本人』は、人種差別的、性差別的な帝国『日本』を体現する先兵となりえたし、それは今も継続している」と述べた。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2003.6.23]