「万景峰92」号の新潟入港阻止−日本各界の声 |
日々の圧力の表れ 大変なショックを受けた。あのような判断をさせたということは、共和国や在日の方々にものすごく圧力がかかったものだと思う。 日本の外務大臣が「むこうが判断したもの」と話したが、前日、盧武鉉大統領と対話をして発表した、対話を重視するといった声明とも矛盾するものだ。 これは政府というよりむしろ右翼による圧力、日本が右翼の圧力に傾いている表れだと思う。在日に対する日々の圧力を象徴するものである。 ほかの港に出入りする船に対しても、大変な圧力を加えようとしている。 民間の経済交流にも支障をきたし、経済制裁にもつながっていくのではないかと心配している。 対話を通じて日朝会談を再開させることを望む。それに向けていろんなところで行動も始まっている。 在日のみなさん、日本の社会に絶望せず、がんばっていこう。(重藤都、東京日朝女性のつどい世話人) 侵略戦争への第一歩 小泉首相は、訪米してブッシュ大統領に誓った「より強硬な措置」を実現できたと誇っていることだろう。しかし、船舶の臨検による海上封鎖は、戦争の初期段階にあたる。「万景峰92」号に対する仕打ちは、その第一歩である。 日本は朝鮮に対して、本気で戦争を仕掛けようとしている、とアジア周辺諸国・民衆はみていることだろう。現に有事法制関連3法案が6月6日に成立し、周辺事態関連法と合わせれば、日本はいつでも戦争に打ってでられる。朝鮮を包囲し、圧力をかけ、制裁措置をとり、侵略戦争することを、正当化し合法であるとみせかける準備は整った。テレビは毎日、朝鮮をつぶしてもかまわないと思い込ませるための映像を流しつづけている。 今回の暴挙は、歴史的な汚点として記されることになるだろう。(北川広和、「日韓分析」編集人) 正常化交渉再開が緊急の課題 日本政府の今回の処置は、朝鮮にとって、日本政府による事実上の「入港拒否」と取られてもやむをえない。このことにより、日本と共和国との間に細々と一筋の糸によりつながれていた人的物的交流が絶たれる可能性がある。とくに在日朝鮮人にとって祖国は遠い国となり、「祖国往来の自由」を奪うに等しいものだ。日朝平壌宣言の「実りある政治、経済、文化的関係」を樹立し、「地域の平和と安定に寄与する」という言葉は空文になったのか。 「万景峰92」号に法的問題があるとするならば、事前に通告しその説明を求め、対話を通じて平和的解決をなすのが日本国憲法に基づく外交の精神である。日朝正常化交渉を速やかに再開することが緊急の課題である。(床井茂、弁護士) あきらめず世論動かそう 「万景峰92」号が来られなくなってしまいました。本当に残念です。私たちもあの船で共和国を訪問しました。祖国への修学旅行を楽しみにしていた朝鮮学校の生徒たちを思い、胸が痛みます。 日本政府は「合法的には入港を止められない」と言いながら事実上入港できなくさせてしまいました。そして、有事法制を易々と通し、「イラク新法」まで強行しようとしています。 日朝平壌宣言はどこにいったのか―。政府の責任ばかりを問うことはできません。北朝鮮敵視の風潮をつくりだしているマスメディアはもとより、感情的に北朝鮮に反発する日本社会の「世論」を変えていく流れをつくりだせずにいる私たちは自らの非を恥じ、無念の思いをかみしめています。 しかし、あきらめてはいけない。ひとりずつでも、わずかずつでも、世論を動かしていきたいと願っています。人間同士の誠実な交流こそが日本と朝鮮の新たな関係をつくっていく道すじであることを信じて。(I女性会議議長) 痛みがわからない国に 朝鮮民主主義人民共和国の貨客船「万景峰92」号が、元山から日本へ出港するのが見送られたことはきわめて残念なことだ。この船には朝鮮大学校の学生、祖国を訪問する人たちが乗ることになっていたというが、永年望んでいた夢が実現できずに憤激している人たちの胸の裡を思うと、申し訳ないという思いでいっぱいになる。いつから日本人は、他人の痛みがわからない人間に、理解しようとしない日本人になったのだろうか。 今回の「万景峰92」号の入港に関して、さまざまなでっち上げを調査することもなく、日本政府はマスコミに流し、日本国民に広げている。少し時代の流れが見えている人には、ねつ造された口実だということがすぐにわかる。対朝鮮包囲網をつくるために、信憑性のない情報を元に「万景峰92」号の出港を見送らせるのは誰がみてもまちがいだ。 このまちがいを一日も早く認めて「万景峰92」号を運航させることが、善隣友好関係を樹立させることにつながっていることを、日本人は深く考えなければならない。(野添憲治、作家) 自由訪問の機会奪う 現在、入港が困難になっている「万景峰92」号。人道的な見地にたてば、誠に遺憾な事態と言わざるをえない。 「万景峰92」号は、日朝両国間の忌まわしい歴史によって祖国と引き裂かれた在日朝鮮人に、祖国訪問の機会を提供してきた。また、朝鮮学校に通う子どもたちの祖国訪問にもたいへんな役割を果たしてきた。今回の事態は、朝鮮人が自由に祖国を訪問する機会を奪ってしまったと言っても過言ではないだろう。 こうした事態が一刻も早く解消され、日朝両国の関係が正常化し、真の平和が実現することを熱望してやまない。(山路徹、APF通信社代表) =順不同 [朝鮮新報 2003.6.14] |