〈大学受験資格 国立大学から〉 冨山一郎・大阪大学助教授 |
民族学校出身者に国立大学受験資格を与えないという文科省の方針は、明確な人権違反であり、日本政府が過去の植民地支配国に対する戦後補償を行ってこなかったことの表れでもある。 以前教べんをとっていた神戸市外国語大では民族学校出身者の受験資格を認めていたため、96年に阪大に赴任して差別を再認識した。98年、阪大の学生グループである「民族学校出身者の受験資格を求める阪大連絡協議会」が、学内の全教員を対象に「大学の自主的な判断で受験資格を認めるべきかどうか」についてのアンケート調査を行った。その時、教員の窓口となり協力したことがこの問題に取り組むきっかけとなった。 アンケートは講師以上の約1150人に送付され173人が回答したが、「すべての国立大は受験資格を認めるべきか」との問いには約8割の144人が「認めるべきだ」と答えた。また「阪大の自主的な判断で受験資格を認めるべきか」との問いには120人が「認めるべきだ」と答えた。 アンケートの結果を見ると、回答したほとんどの教員が門戸を閉ざしている現状に対し、「おかしい」と言っている。しかし、本来ならそのような意見を反映させる場であるべき教授会での発言が少なく、「文科省の方針を待つべきでは」との消極的な姿勢のなか、まったく声が上がらないのが現状だ。 このような学内の反応には、国立大の独立行政法人化(来年度)が大きく影響している。「独法化にともなう大学再編の中で先走って国立大が認めるのか」などという消極的意見には、「今の時点で文科省にたてつくのは損だ」という思いが込められている。 「反抗する大学に対しては制裁もありうる」とにらみをきかす文科省の影に脅かされている国立大の姿に、個々人のレベルでは「認めるべき」としながらも、「大学」という機構としては動いていかない問題点がある。 国立大学教職員が立ち上がり、ネットで賛同を求めた署名運動は一定の成果となったが、メールによる運動には限界があるのも事実。次にどう結びつけるかが今後の課題だ。 学内の人権問題委員会や教授会を含めた賛同者との組織だった連携が必要とされるが、今後は阪大でも「全学教官有志の会」(仮)のような連絡組織を作っていきたいと思っている。(まとめ、編集部) [朝鮮新報 2003.6.13] |