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そこが知りたいQ&A−「万景峰92」号はなぜ入港を見合わせたか

 Q 9日、「万景峰92」号は新潟入港を見合わせた。日本政府は、同号の入港を前に前例のない「警戒態勢」を敷いたというが。

 A 国連海洋法条約には、どの国の船舶に対しても差別なしに入港を許可しなければならないと規定されている。同条約に基づく日本の港湾法も、どの国の船舶に対しても不公平な取り扱いをしてはいけないと定めている。しかし日本政府は今回、入港許可を受けていた同号が実質的には新潟に入ってこられないようにした。

 1隻の旅客船の入港にあたり、関係7省庁が総動員し、検査と監視に当たった例は過去にない。入港予定の9日の数日前から1800人の警察と完全武装した特殊警備隊など治安兵力を出動させ、 総連新潟県本部と祖国訪問事務所を完全に包囲し、埠頭周辺に警戒網を敷いた。

 武装した海上保安官が船内に突入する訓練を繰り返し、100人を超える検査官が客室のタンスの引き出しまで見るなど、船内の隅々まで検査する訓練もしていた。

 一方、入港予定日の3日前から右翼団体が新潟に集結し始め、9日までに約100団体、総数800人が宣伝車200台で市内と埠頭で騒ぎ立てた。さらに、 総連本部と祖国訪問事務所、総連活動家の自宅にまで押しかけ、暴言を吐き威嚇した。「反北朝鮮」を叫ぶ団体は、拉致家族まで新潟に集結させ、駅前と市内各所でビラを配り、「緊急集会」を開き、埠頭でデモまで行った。

 このような、常軌を逸した、敵視しているとしか言いようのない状況が作られるなかでは安全な入港は難しく、祖国を訪問しようとした同胞と学生の安全も脅かされていた。

 Q 日本の一部勢力はマスコミを動員し、「万景峰92」号によって「ミサイル部品輸出」、「麻薬運搬」が行われていたなどと騒ぎ立てている。

 A 日本政府が「万景峰92」号の入港を「規制」する重要な口実にしているのが、5月に米国上院で行われたいわゆる「亡命者」の「証言」だ。

 「亡命者」らは、「ミサイル部品の90%が 総連を通し、『万景峰92』号で3カ月に1度、数千種類ずつ送られてきた」、「麻薬輸出をしている」などと「証言」しているが、これらの「証言」について南朝鮮の国家情報院は3日、国会で「確認の結果、身分と情報内容を誇張していたことが判明した」と指摘。また、民主党の咸承煕議員は、「脱北者たちが自分の情報価値を高めてアメリカに移住する機会を得ようとの打算のもと、無理な過大かつ誇張証言を行ったことは深刻な問題である」と指摘している。しかし、日本のマスコミは現在も、「証言」を「万景峰92」号入港拒否の根拠にし、書き立てている。

 さらに、この数日の間に、拉致家族らの発言を利用し、あたかも「万景峰92」号が「拉致船」でもあるかのように、意図的に世論を誘導している。

 Q 日本政府が「万景峰92」号の入港を阻止しようとする理由は何か。

 A 与党の国会議員は「万景峰92」号の入港拒否が日本の朝鮮に対する制裁の「有効な手段」になると露骨に発言している。また、朝日新聞(5月29日付)は、「日米首脳会談で小泉首相が表明した『より強硬な措置』の一環」だと指摘している。

 5月に発表された米、南朝鮮の共同声明では、朝鮮に対する「追加的な措置」について言及された。

 これらの動きは、米国と日本、南朝鮮が核問題をはじめとする「対北朝鮮政策」において、「包囲網」を完成させ、より強硬で新たな具体的行動に出ようとしていることを意味している。

 今回、日本政府が前例のない「警戒態勢」を敷き、事実上、「万景峰92」号の入港を阻止したのは、まさにそのひとつの現れだと言える。

[朝鮮新報 2003.6.12]