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〈大学受験資格 国立大学から〉 池内了・名古屋大学教授

 私たち「外国人学校卒業者の名古屋大学への入学資格を求める会」(以下、「求める会」)は、1997年の日本弁護士連合会の「報告書」、98年の「勧告書」を受ける形で、99年4月に呼びかけ人22人の連名で「求める会」を立ち上げ、「名古屋大学の独自の判断において、外国人学校、なかんずく民族学校卒業者の受験資格を求める」署名活動を開始しました。

 7月までに署名数は800を越え、総長と会見しその意向を伝えましたが「設置者である国の意向を尊重する」との一点張りで、大学としての独自の判断ができない恥ずかしさを感じたものです。それでも、副総長との会見において「入試制度問題検討委員会で審議する」との言質を得て一定の前進はあったものの、現実には一歩も進まない状況が続いています。

 もはや、国立大学は文部科学省の顔色を見て判断する存在に成り下がってしまったと言わざるを得ません。そのことは国立大学の法人化問題についていっそう顕著であり、法人法案が成立する前から法人化の準備に奔走し、トップダウン方式の総長選挙暫定方式を先取りする始末です。

 この状況を見ていると、個々の大学での運動だけでなく、文部科学省の態度を改めさせる全国的な運動の展開を図る必要があると考えています。

 折しも、インターナショナルスクール卒業者の入学資格を認めて民族学校卒業者には認めない文部科学省の方針が伝えられています。

 さて、この国は、なんと情けない国なのかと悲しくなってしまいます。戦前から戦後にかけての歴史的責任を放棄し、民族学校卒業者の人権を踏みにじるものであるからです。

 しかし、一方では文部科学省の方針に多くの異議が唱えられ、あからさまに方針を打ち出せない状況であることも確かです。この問題は、単に文部行政の枠にとどまらず、多民族、多文化の共生という国際的な視野からも改善が望まれていることであり、また外交交渉の障害にもなりかねない要素を含んでいるためです。その点を強く衝いていくことにより、民族学校出身者への国立大学への受験資格を認めるための法的措置をとることが困難であっても、各大学の独自の判断に任せるという措置を取らせることは可能と思われます。

 自立し自主性のある国立大学とするためにも、私たちはいっそう強く国に働きかけたいと思っています。

[朝鮮新報 2003.6.6]