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〈従軍慰安婦問題〉 日本の国家責任、賠償認めた下関訴訟否定に怒り

 2000年12月に東京で開かれた日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷を機に、日本政府に対する植民地支配の謝罪と補償を求める運動が国際的に広がる中、日本の最高裁判所は3月25日、「日本政府は慰安婦に対して賠償する必要はない」という判決を下し、日本の国家責任と賠償を認めた1998年の「下関訴訟」を否定した。2日にはこれと関連し、「許せない! 最高裁の上告棄却―裁判報告とこれからの課題〜宋神道さん、10年間のたたかいに応えて」と題する抗議集会が都内で開かれ、「代を継いででも解決」していくべきことが強調された。4月、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権委員会では、「従軍慰安婦」問題に対する日本政府の不誠実な対応があらためて批判された。世論と逆行する日本政府の姿勢が浮き彫りとなった。

「戦争だけはしちゃいけないねえ」と訴える宋神道ハルモニ(2日、東京で開かれた抗議集会)

 抗議集会では、16歳の時から7年間、旧日本軍の「慰安婦」として慰安所生活を強いられた宋神道さん(宮城県在住、81)が、在日朝鮮人として唯一、10年間にわたって日本政府に謝罪、補償を求め繰り広げてきた法廷闘争を振り返り、こう語った。

 「日本は、針持って横っ腹刺さなきゃ痛いかかゆいかもわからない国だ。血も涙もある裁判官と政治家さえいたら…。同じ人間でも、朝鮮人ならどんなことをしてもいいのか。裁判に負けても心は負けない」

 悔しさと憎しみを訴える宋さんの言葉に、会場からは激励の拍手が送られた。

 また、宋さんとともにたたかってきた金敬得、小沢弘子の両弁護士、岡崎トミ子(民主)、福島瑞穂(社民)の両参議院議員、「支援する会」を代表して梁澄子氏がそれぞれ発言した。

 金弁護士は「代を継いででも解決しなければならない問題。朝鮮と日本の2国間協定上で、また国際法の見地から個人が請求権を求められるよう、これからもたたかい続ける」と決意を述べた。

 岡崎議員は、「『性奴隷問題解決法法案(仮称)』を必ず成立させるため、与党に積極的に働きかけていきたい」と主張した。

 梁氏は、「宋さんが望む解決のためのすべての裁判が終わったが、これからも宋さんとともに歩んでいく」としながら、ほかの「慰安婦」訴訟の支援や立法運動に取り組むことを明らかにした。

国際世論、日本を厳しく批判

 【解説】日本弁護士連合会が95年にまとめた「従軍慰安婦」問題に対する提言は、元「従軍慰安婦」を戦争犯罪の被害者と認定し、国際法上も個人補償などを要求する権利があることを明確にした。さらに日弁連は、朝鮮人強制連行、強制労働問題の加害者の責任問題について言明した昨年の日本政府への勧告の中で、慰安所が開設された後の1937年の日本大審院(現在の最高裁に相当)は、日本から女性をだまして中国・上海の海軍慰安所に連れて行った日本人経営者に対し、有罪判決(略取、誘拐罪)を下しているとし、この行為自体が強制連行であったと裏付けた。

 しかし、最高裁判所は日弁連の提言、指摘を無視し、さらには日本の国家責任と賠償を認めた「下関訴訟」(1998年)を否定して、「日本政府は慰安婦に対して賠償する必要はない」という判決を下した。

 4月の国連人権委では、クマラスワミ氏(「女性に対する暴力」に関する特別報告官)が最終報告書を提出。戦時下の強姦は戦争犯罪や人道に対する罪に該当しないと主張してきた各国の代表として、日本政府を名指しで批判。さらに同氏は96年の日本政府への勧告で、「従軍慰安婦」犯罪の法的責任を認め、被害者に対する公式謝罪、賠償、加害者処罰、文書および資料の開示―をするよう日本政府に求めていた。

 しかし、日本政府は今回の人権委で、こうした国連の勧告、最終報告をあらためて拒んだ。

 日本政府は一貫して「法的責任はサンフランシスコ条約や日韓条約で解決済み」との立場をとっているが日韓条約で同問題は取り上げられていない。在日同胞に関しても除外された。

 こうした情況の中、解決策としては、日本国内での問題解決のための立法成立などが求められる。日本政府は、昨年9月に調印した朝・日「平壌宣言」の中で、植民地支配下の「朝鮮の人々に多大な損害と苦痛」について「謝罪の意」を表明したが、「従軍慰安婦」問題も、日本が過去の清算をどのように行うべきかを問うものと言える。

 また、米国のように、被害国の法に基づき、被害国で加害者を処罰、被害者を救済する裁判が行われることも解決策として考えられる。(基)

[朝鮮新報 2003.5.17]