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月例研究会「米国の覇権主義と国際秩序−イラク戦争と朝鮮半島」−米追随の日本政府に危機感

 月例研究会「米国の覇権主義と国際秩序―イラク戦争と朝鮮半島」が4月30日、東京都港区の大阪経済法科大学東京セミナーハウスで行われた。研究会では主催者の国際問題研究協会会長の武者小路公秀氏(中部大学中部高等学術研究所所長)が基調報告を、李南柱・朝鮮問題研究所所長がコメントをした。

 「反テロ戦争と朝米交渉の諸問題」と題した報告で武者小路会長は、米国が起こしたイラク戦争の目的は、イラクのいわゆる「民主化」とそれを通じたイスラエル周辺のアラブ諸国の「民主化」にあると指摘。「戦争による平和維持」という新たな国際秩序を構築するため、世界のどこかに危機を作り出すのが米国の一貫した政策だと述べた。

 また、こうした政策から朝鮮半島での「核問題」を強調しているのであり、究極的には朝鮮半島情勢を混乱させることで中国を含む周辺地域の経済状況を悪化させ、同地域での主導権を握ろうとしていると語った。

 会長は日米同様、朝鮮にも「タカ派とハト派が存在しているのではないか」と推測しながら、「タカ派」がいわゆる「瀬戸際外交」をしなくても済むよう、米国をどのように抑えるかを考える時だと述べながら、朝鮮の「核保有是認」は危険ではあるが米国に対する抑止力にはなると指摘した。そのうえで、こうした朝米のチキンレースを止めるには、やはり朝鮮が提案している不可侵条約しかないと強調した。

 一方、不審船や脱北者などインフォーマル・レベルでの動きにも注目すべきだと述べながら、日本で騒がれている拉致問題の前提として朝・日の非正常な関係を念頭に置くべきだと指摘した。

 最後に、南では「米国の核先制攻撃はない」というのが主流の世論であることに触れながら、南と日本の市民の連携を通じて朝・日会談以後の日本の排外主義的傾向に立ち向かっていこうと訴えた。

 李南柱所長は、核問題を取り巻く朝米関係を理解する上で、朝鮮が感じている脅威について思いをはせる必要があると指摘。朝鮮が核問題発生後、一貫して米国に求めているのは自国の安全保障と敵視政策の中止、関係正常化だと述べた。

 また、最近の日本の朝鮮に対する報道はエモーショナル的、モラル的に語られるきらいがあるとした上で、メディアが頻繁に使う「体制保障」という言葉は朝鮮では一切使っておらず、「支援要求」も重油提供の中断に伴う賠償と経済制裁の解除というのが正しいと指摘した。

 そして、これから成長するであろう朝鮮の可能性を摘み取るべきではないと述べながら、「圧力によって変えられる」という米国の考え方は適切でないばかりか、むしろ悪い方向に行くだろうと強調した。

 研究会では質疑応答も行われ、参加者らは米国に追従する日本政府やマスコミに危機感を感じると述べながら、こうした日本の現状を変えるためにどうすべきかを今後も話しあっていこうと確認し合っていた。(李)

[朝鮮新報 2003.5.8]