「万景峰92」号新潟入港規制立法取り下げを−平山知事に宛てた市民らの要請書 |
私たちは、新潟港と朝鮮民主主義人民共和国の元山港を結ぶ国内唯一の定期航路、日朝航路の存続と唯一のパイプ役となっている貨客船「万景峰92」号のこれまで通りの入港を求めます。私たちは、国内唯一の日朝航路をふさがないでほしいと願っています。 平山知事は、2月7日政府に対して「県民感情として不安がある」として「万景峰」号の「入港規制」とそのための「立法措置」をとるように要請しました。私たちは、新潟県が港湾法の理念を逸脱して、反北朝鮮キャンペーンを加速するような言動を強めていることは、今後の日朝国交正常化交渉に障害をもたらすものであり、深い憂慮を感じています。 入国管理当局は、入港検査の要員を2年ほど前から増強しましたが、人的、物的にはすべて問題なく入港が行われています。しかも2002年12月6日に県議会で可決された意見書は、検査体制の徹底強化を求めるものであって入港規制ではありません。 私たちは、日本人拉致事件を契機に強まる北朝鮮や在日朝鮮人への排外主義キャンペーンに憂慮するものです。私たちは、北朝鮮当局による日本人拉致事件を決して容認するものではありません。この点については、北朝鮮当局の真摯な反省と真相究明が求められると考えます。しかし、感情的な、情緒的なテレビ、新聞報道により増幅された北朝鮮バッシングの風潮の中で、入港規制に走る県知事、県当局の姿勢は、北朝鮮を含む諸外国と平和的友好的な関係を求めてきた県民世論といささか背離しています。仮にこの「万景峰92」号が入港規制されれば、朝鮮学校生徒の祖国との交流をはじめとする唯一の人的交流や貿易の窓口が閉ざされ、子供たちへの食料支援のパイプもふさぐことになります。 またアジア各国の人々は、日本の有事法制の動きに危機感を強めています。入港規制は、「経済制裁」ともとられかねず、それは結果的には、国際間の対立や戦争をあおる行為にほかなりません。知事自ら他県に誇れる唯一の航路を投げ捨てることは、日朝交流における新潟県の特別な役割、歴史を返上することになります。 私たちは、わが国が過去、朝鮮半島を植民地化し、日本語の強制、天皇崇拝の強制など朝鮮民族としての基盤すら奪い、その清算がいまだ終わっていないと考えます。戦前、戦中の朝鮮人強制連行の事実は県内随所に見られ、中国人強制連行裁判も行われています。新潟港はそうした朝鮮半島、中国東北部への侵略の港でした。その反省から戦後は出発したはずです。新潟県議会、新潟市議会をはじめ超党派で日朝友好、親善のために相互交流を深めてまいりました。新潟市には友好の印である「ポドナム通り」があり、朝鮮半島との平和と友好を求める県民運動の拠点でもありました。そうしたこれまでの県民各位の努力に水をさす入港規制要請を取り下げるように求めます。 2003年3月17日 【申し入れ人代表者】風間作一郎(教育をよくする新潟市民会議会長)、片桐元(人権と報道・連絡会会長)、上島一高(牧師)、川村邦彦(新潟NGO人道支援連絡会代表)、古泉正栄(元新潟県平和環境労働組合会議事務局長)、小日山紀郎(全日本港湾労働組合新潟支部執行委員長)、小山正明(元新潟県高等学校教職員組合執行委員長)、佐藤忠治(大潟町、会社員)、中川良一(元新潟県議会議員)、南雲和子(主婦)、野村彰(元新潟大学教員)、長谷川政一(元小千谷市議会議員)、牧絵孝栄(新潟県労働組合交流センター事務局長)、まゆずみただし(医師)、道見忠弘(新潟県平和運動センター議長)、宮下弘治(日朝国交促進新潟県民会議)、矢野教(新潟大学名誉教授)、吉田正雄(元衆議院議員)=3月16日現在。50音順 [朝鮮新報 2003.3.29] |