真相追求し、違法性検証−NHK「女性国際戦犯法廷」番組改ざん提訴から1年半、東京で報告集会 |
22日、東京都新宿区の早稲田大学国際会議場で、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(以下、VAWW-NETジャパン)主催による「第9回NHK裁判報告集会−現在の争点を検証する−」が催された。 NHK裁判は、2000年12月、東京で開かれた「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」(以下女性法廷)番組を、NHKが改ざんして放送したことに対し、VAWW-NETジャパンが提訴したもの。 女性法廷の翌年に、ハーグで最終判決が下されたが、両法廷では、多数の証言、証拠に基づいて、世界的に著名な法律家たちにより「昭和天皇有罪、日本に国家責任」という歴史的な判決が下された。この開廷にあたって、中心的な役割を果たしたのがVAWW-NETジャパン。日本軍性奴隷制(いわゆる「慰安婦」制度)について、国家や天皇の責任を明らかにした女性法廷は、当時、海外では大きく報道されたが、日本のメディアは消極的だった。 NHKは、ETV特集として「女性法廷」を記録する番組の制作を企画。しかし、番組放送中止を要求する右翼団体の圧力によって、番組内容は大幅に改ざんされた。2001年はじめに放映された番組には、「天皇有罪」も、元加害兵士の証言もなく、「女性法廷」主催団体のひとつであるVAWW-NETジャパンやその代表の名前もなかった。さらには、放映に当たって急遽収録された秦郁彦氏のコメントは、被害者たちを侮辱し、その名誉を毀損するものだった。 この日行われた集会では、NHK裁判原告側弁護団・大沼和子弁護士が、あらためて裁判の争点と論点を分析、整理し、今後の展望について語った。大沼弁護士は、本件訴訟における原告らの請求を、信頼利益の侵害、説明義務違反の2点にまとめ、信頼利益、説明義務の発生時期、内容、それらが侵害された経緯と、本件番組の企画、編集、放送の全過程における事実関係が明らかにされるべきであると主張した。そして、その違法性を判断するために、本件番組の改編が、いかなる事情により推し進められたかを明確にすることが重要だと語った。今後、証人尋問を通じて、さらなる追及を深めていく構えだ。 また、集会に続いて、ビデオ作品「戦争に沈黙しない人々−9.11から1年後のニューヨーク」が上映された。ビデオには、2002年9月11日午前8時46分、ユニオンスクエアのアスファルトの上に横たわり、1年前のその時間にテロの犠牲になった人々と、米軍の攻撃で死傷したアフガニスタンの人々を追悼し、戦争反対の意思表示をする市民らの姿が込められていた。同時刻、イラク攻撃を宣言するブッシュ大統領の姿とは対照的な光景だった。 映像には、9.11以降のマスメディアの報道にはうんざり−といった、ニューヨーカーたちの姿が反映されていた。「アフガン空爆以降、反戦の雰囲気が高まっているのに、マスメディアではほとんど扱われなかった」「戦争支持はウソ」と話す市民たち。製作にあたったビデオ塾・青野恵美子さんは「被災地であるニューヨークの人々は冷静さを取り戻した。気になるのは日本だ。9.11情報も、星条旗、英雄、そして愛国心をかき立てるアメリカの垂れ流し、今は北朝鮮を攻撃している。NHK番組の問題は特殊な事例ではない。日本のメディアが抱えている普遍的な問題だ」と話し、問題の解決には「市民らのアピールが必要だ」と語っていた。 [朝鮮新報 2003.1.29] |