現状に異議あり〈下〉−軍事立国を歩む日本 |
戦争 米国の謀略体質 日本の侵略戦争に起因する朝鮮戦争を、朝鮮民主主義人民共和国と米国がいまなお戦っている。米軍に率いられた対朝鮮国連軍はソウルに司令部を、座間に後方司令部を置き、横田や横須賀、佐世保、沖縄の嘉手納・ホワイトビーチなどに部隊を配し、それらの基地には今日も星条旗と国連旗がはためいている。 北東アジアを移動する米軍には国境がない。たとえば米本土から米軍横田基地へ飛来する大型輸送機C−130や戦闘機F−15Eは韓国の馬山・光州などとの間を頻繁に往復している。むろん米海軍の艦艇も原潜も同様である。つまり彼らは日韓を、日常的に、自由に動いている。彼らの飛行と航行をジャマするものは何もない。こうした米軍の行動はすべて日米地位協定と韓米地位協定によって保証されている。そのふたつの協定を強く彩っているのはまさしく「隷属」だ。同協定は支配者が誰なのか、従者が誰なのかを明確かつ冷厳に謳っている。すなわち米国にとって、日本と韓国は過去も今も私の植民地≠ネのである。これこそ目をそらすことのできない現実。否定しようのない現実である。 要するに米国は、北東アジアにやりたい放題の体系をつくっているわけだが、「テロ」問題や朝鮮危機との関係でさらに触れたいのは彼らのすさまじい謀略体質である。 たとえば01年9月11日の米国中枢部襲撃事件について02年5月、まさに驚くべき疑惑が浮上した。5月15日の米紙ニューヨーク・タイムズなどによると「ブッシュ米大統領たちは9.11ハイジャック米国中枢部襲撃を事前に知っていた。しかし、それを放置していた」という。CIAが事前に襲撃情報をもたらし、やはり事前に襲撃を知らせるFBIアリゾナ事務所から同本部へのいわゆるフェニックス・メモ≠ェ存在している。 あまつさえブッシュ氏たちは、5月16日の米NBCなどによると「アフガン爆撃計画を9.11襲撃の2日前すでに大統領署名の段階にまで進行させていた」のだった。 総動員体制作り ストックホルム国際平和研究所などによると、米国の軍事費は世界全体の約36%を占め、彼らは世界各地の紛争の92%に武器や軍事技術を供給しているという。まぎれもない世界最大の「死の商人」である。ちなみに米軍はアフガン後もフィリピンやグルジア、コロンビアなどに軍事介入し続けている。ブッシュ米大統領は辺りを睨めまわしrogue(ごろつき)≠ニ叫ぶ。 だが、もし米国中枢部襲撃とアフガン殺戮の演出者(あるいは進行役)がほかならぬブッシュ氏だとすれば、皮肉なことに真のrogueはブッシュ氏自身ということになる。 とともに、強く関心を引かれるのはこの間の日本の動きである。ブッシュ氏が米国中枢部襲撃とアフガン殺戮開始の演出者なら、小泉首相たちが息せききってつくりあげたテロ対策特別措置法はどうなるのか。日本は同法を手がかりに5隻の艦艇をブッシュ氏の殺戮≠ノ加担させ、おまけに日本人拉致騒動にまぎれて02年12月、補助の枠を超え前面で殺戮システムを稼動させるイージス艦を派遣した。明白な違憲行為(集団的自衛権の行使)である。 いずれにしろブッシュ氏が一連の血なまぐさい行為の演出者なら、テロ対策特別措置法は宙に浮き、それに乗っかった動きはすべて根拠を失う…。が、「ブッシュ氏」からいったん離れ国内の事態を注意深く追うと別の光景が浮かんでくるのだ。小泉首相が今国会で成立させようとしている武力攻撃事態法案など有事法制化の絡みである。 99年に自衛隊(日本軍)が米軍の指示どおりに参戦する新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)の関連法を成立させた。そして01年にテロ≠梃子に参戦を現実のものにしたのだが、としたら残る課題は国民の徹底管理と総動員体制づくり(有事法制)である。この米国に手を引かれて進んできた経緯は同時に、日本の新たな軍事立国の歩みでもあった。 「軍神爆弾三勇士」 いま、新たな軍事立国の流れを拉致の熱狂が加速させている。拉致被害者たちは日の丸の旗に包まれ、しだいに、1932年2月22日に戦死した「軍神爆弾三勇士」に変貌させられているのではないだろうか。この暗雲を払うことができるのは「わが手」だけである。(野田峯雄、ジャーナリスト) [朝鮮新報 2003.1.20] |