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〈投稿〉 かけ違えたボタンを早くかけ直せ

 はげしい朝鮮民主主義人民共和国へのバッシングが続いている。

 毎日、どこかのテレビで亡命した元工作員なる人物が「政治犯収容所」の惨状を語り、飢えでやせ細った幼児の姿がこれでもか∞これでもか≠ニ映し出される。

 そこではつねに朝鮮が悪魔の国≠フように扱われる。

 朝鮮の好意で日本に贈られてきた京都動物園の朝鮮のトラ、上野動物園の朝鮮オオカミ、多摩動物園のクロツラヘラサギなどがいま子供たちの人気者になっている。

平壌郊外竜山の日本人墓地 (筆者提供)

 阪神・淡路大震災のとき、いち早く100万ドルの義援金を送ってくれたのは朝鮮だった。

 三千数百名の日本人が眠る平壌郊外の竜山墓地や清津などの日本人墓地を朝鮮の人たちがあたたかく守ってくれていることなど伝えるところはまったくない。

 そして何よりも過去36年間、朝鮮を植民地支配し、多くの朝鮮人を強制連行し、10万近い婦女子を「従軍慰安婦」に狩り出し、名前や言葉まで取り上げ、貴重な文化財を奪ってきたことなどには触れようともしない。

 私は、いま日本人はもっと朝鮮を広く正確に見るべきだし、あの憎むべき拉致問題も日朝関係の不幸な歴史の中で起こった不幸な出来事であったことを冷静に見つめ直してみるべきだと思っている。

 拉致問題は日朝両政府が信頼と誠意をもって対応すれば必ず解決する。

 朝鮮は「1〜2週間の一時帰国」の約束が一方的に反故にされたと反発している。

 命より大事にする自尊心を傷つけられたと硬直しているのだろう。

 朝鮮は、日本への帰国は本人たちの意思にまかせると言っている。

 かけ違えたボタンは早くかけ直したほうがいい。

 そして1日も早く5人の親たちが子供たちや家族とこれからのことを話しに行ってほしい。恐らく多くの人たちがそう願っているに違いない。

 いま朝鮮の核問題が大きな国家問題になっている。日本外交の叡智を傾け、平和的な解決に総力をあげてほしい。

 日本国民の7割近くが日朝国交正常化交渉を支持している。早く不幸な過去を清算し、真に一衣帯水の隣国として、平和で明るい日朝関係建設へ向かって新しい一歩を踏み出したいものだ。(唐笠文男、出版会社監査役)

[朝鮮新報 2003.1.17]