そこが知りたいQ&A−朝鮮はなぜNPT脱退? |
Q 朝鮮が核不拡散条約(NPT)からの脱退を表明したが。 A 朝鮮政府は10日、声明を発表し、「国家の最高利益が極度に脅かされている事態に対処して」NPTを脱退したことを宣言した。米国の指示で、「核開発計画」を検証可能な方法で放棄することなどを求めた国際原子力機関(IAEA)の決議を不当としたものだ。脱退効力は翌11日から発生した。これにともない、同条約が加盟国の非核保有国に定めているIAEAとの保障措置(核査察)協定からの拘束も解かれた。 Q 確か93年にも脱退を表明したことがあるのでは。 A そうだ。93年3月12日、朝鮮はNPTからの脱退を表明した。同条約は「自国の至高の利益を危うくしていると認める場合」(10条1項)、脱退する権利を加盟国に認めている。その場合、脱退とその理由を3カ月前に全加盟国と国連安全保障理事会に通告する義務がある。つまり脱退の効力が発生するのは、宣言から3カ月後となる。 Q 93年、そして今回と2度、脱退表明したことになるが。 A 朝鮮は92年1月、IAEAとの保障措置協定に調印。これに基づいて93年1月まで6回にわたって「特定査察」を受けてきた。だが、今回と同様、米国が「核開発疑惑」を騒ぎ立て、それを受けて2月にIAEA理事会が協定と関係ない「特別査察」を要求する決議を採択。同時に核戦争演習であるチーム・スピリットが実働段階に入った。このような状況のもとで朝鮮は、「国の最高利益を守るための措置」として、93年にNPT脱退を宣言した。 朝米は同年6月2〜11日に会談を行い、脱退効力発生1日前の11日に共同声明を発表した。その中で米国が朝鮮側に対し、核兵器を含む武力を使用せず、威嚇もしないことを保証し、朝鮮の制度と自主権を尊重し内政に干渉しないことを約束。これにともない朝鮮側は、NPT脱退を「必要であると認めるだけ一方的に臨時停止」した。朝米の枠内での取り決めだった。 Q だから今回の政府声明で脱退効力が発生したわけだ。 A そのとおりだ。朝米は94年10月、共同声明の原則堅持をうたった基本合意文に調印。この中で、朝鮮側が黒鉛減速炉と諸関連施設を凍結し、究極的に解体する代わりに、米国は2003年までに100万キロワットの軽水炉2基を提供することと、それまでの代替エネルギーとして毎年50万トンの重油を提供することを約束した。だが、軽水炉の工事は大幅に遅れており、03年完成は事実上不可能になった。朝鮮側が「朝米合意が危機に瀕している」と指摘したのもそのためだ。 さらに、米国が新たな「核疑惑」を理由に昨年12月に重油提供を中断させたことから、朝鮮側は基本合意文に沿って行ってきた核凍結を解除。その監視のために寧辺に常駐していたIAEA査察員の使命も終わったとして退去させた。したがって、基本合意とは何ら関係のないIAEAが「核計画」放棄を求める決議をすること自体が不当なわけだ。核問題は米国とのみ解決可能だという朝鮮側の立場は一貫している。 Q そもそもNPTとは何か。 A 寄託国は核保有国だった米、英、ソ(当時)の3カ国。核兵器保有国の増加防止を目的としたもので、70年に発効した。朝鮮は85年に加盟したが、それは条文に、武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならないとうたっているからだ。つまり、寄託国である米国の核の脅威を除去し、朝鮮半島を非核地帯に変える目的から加盟した。 ただ、NPTは非核保有国に対しては水平拡散(製造、開発)を禁じる一方、核保有国に対しては垂直拡散(核兵器の増強)を防ぎきれないなど、不平等条約だと言われてきた。 そうした不平等性はIAEAとの関係にも現れている。NPT加盟国は、プルトニウムの軍事転用を防ぐためにIAEAと個別に核査察協定を結び、それに応じて査察を受けることになっているが、これは非核保有国にのみ課せられたもので、核保有国には課せられていない。(文聖姫記者) [朝鮮新報 2003.1.17] |