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〈月間平壌レポート〉 6者会談は「米国次第」

もうひとつの選択

 8月4日、朝鮮外務省は北京での6者会談開催について公式に発表した。平壌市民の話題は4月の3者会談以来、約4カ月ぶりに開かれる「朝米会談」に集中した。

 市民にとっては、1月の核拡散防止条約(NPT)脱退宣言の時にすでに予見されていた事態の進展である。最初は対話を否定し、圧力攻勢に打って出ても、米国は結果的に交渉のテーブルに着かざるを得ない。冬の寒い時期、市民たちが語っていた言葉である。

 6者会談という「会談の形式」は予想外だったかも知れない。外務省の発表以来、多国間協議に参加する各国の思惑について人びとからさまざまな質問を受けた。

 「結局、朝米が当事者という事実に変わりはない。米国の意思さえ見極めればいいわけだ」

 平壌で開かれた8.15民族大会の会場で旧知の人物に会った。著名な作家である彼は、「自分は政治の専門家ではない」と断りつつ、会談について自分なりの見解を披露した。

 「参加国が増えても3者会談の継続。わが国は前回、問題の解決策を示したのだから、米国が相応の回答を示さなければ、代表団は帰ってくればよい」

 平壌市民は、会談の進展に期待をしながらも、今後の米国の対応については、それほど楽観視していない。これからも難関はいくつもあるというのが、彼らの見解だ。会談が暗礁に乗り上げた場合の「もうひとつの選択」についてもよく耳にする。

 朝鮮は、米国が強硬策を続けた場合の自衛手段として「核抑止力のさらなる強化」について表明している。一般の人びとは当然、その具体的な内容を知る由もないが、作家は「5年前は建国記念日(9月9日)を控えて人工衛星の発射に成功した。わが国は自分の力を堂々と誇示する意志がある」と語った。「核実験」や「核保有宣言」を念頭に置いた発言だったようだ。

民族の共同歩調

 「6者会談は6者会談。私たちは私たちなりにやる」

 8.15民族大会の会場では、こんな話も聞いた。北南問題を担当するある関係者は北、南、海外の民間団体代表、平壌市民数千人が集う大会の光景を見て、「これが、われわれの戦争抑止力だ」と、感想を述べた。

 「米国と対峙する朝鮮の現状では『平和』をいくら叫んでもだめだ。だから軍事的な力を強化する。一方、政治的には北、南、海外同胞の共同歩調で米国の戦争脅威に対抗する」

 「孤立した北朝鮮」の「身勝手なラブコール」ではない。6.15共同宣言は確実に分断民族の内部に大きな変化をもたらした。

 北、南、海外代表が参加するレセプションで南の「全国連合」常任議長は次のようなスピーチを行った。

 「ホテルで寝ていると夜中になぜか目が覚めたのです。窓の外を見ると、月の明かりに照らされた大同江、まさしく平和そのものでした。その瞬間、恐ろしいイメージが浮かんだのです。平壌市内の建物が粉々に砕け、大同江が血に染まる戦争の悲惨な光景です。

 翌日、学生少年宮殿を参観してあらためて強く感じました。戦争は決して起きてはならない。皆さん、平和は願うだけでは実現しません。勝ち取るものなのです」

 そして北南の共同歩調について、こうアピールした。

 「平壌に来てひとつだけ質問したいことがあります。南の仲間たちに伝えたいのです。北の同胞の皆さん、もし南の同胞が大国によって苦境に立たされたとき、一緒に苦しんでくれますか。戦争の脅威にさらされたとき、一緒に立ち上がってくれますか」

 実際それは、南の代表たちの決意表明であった。会場からは拍手が沸き起こった。

生活の実感

 核抑止力と民族の共同歩調。ふたつの「戦争抑止力」によって支えられているからであろうか。核問題で緊張が高まっているのにも関わらず、平壌の人びとは情勢の変化に泰然たる態度で対応する。6者会談に対する視点も冷静だ。

 今月、南のKBSの人気番組「のど自慢」が平壌で公開録画を行った。北の一般市民が出演した番組は解放記念日の8月15日、北と南の双方で放映された。

 北の人びとは核抑止力を目で見ることはないが、もうひとつの「抑止力」、民族の共同歩調は生活の中で実感として得ている。

 8月下旬には大邱ユニバーシアードに北の選手団、応援団が参加した。北京で6者会談が行われている間、北のテレビでは、南で行われている競技の模様が連日放映されていた。(平壌発=金志永記者)

[朝鮮新報 2003.8.29]