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「核問題で公正な態度を」−国連安保理議長にあてた白南淳外相の書簡

 白南淳外相が、6月26日付で国連安全保障理事会のセルゲイ・V・ラブロフ議長に送った書簡の全文は次のとおり。

 最近、国連安保理でいち常任理事国が朝鮮半島の核問題を取り扱うための外交的交渉を開始したことに関連し、それに対する共和国政府の見解を表明することが適切であると見なす。

 国連安保理は国連憲章に立脚して国際平和と安全を守る重大な使命を担っている。

 この使命は、最大の公正さを求めている。

 特に、朝鮮半島の核問題は小国と大国間の問題であるだけに、この問題で理事会が公正な態度を取るなら、それは朝鮮半島と、ひいてはアジア太平洋地域の平和と安定を保障し、国連の権威を回復するのに大きく寄与するであろう。

 こうした見地から私は、理事会が朝鮮半島の核問題に関連し、優先的に注目してほしいと考えるいくつかの問題に議長先生の注意を喚起したい。

 第1に、国連安保理は何よりもまず、「悪の枢軸」と「先制攻撃」教理に対する見解を定立し、態度を表明することが必要であると見なす。

 これはこんにち、国際関係と国際平和、安全分野に深刻な影響を及ぼしているもっとも本質的な問題である。

 理事会のいち常任理事国が主張し、政策化している「悪の枢軸」と「先制攻撃」教理の標的は、いずれも国連加盟国である。

 この政策が実践に移されてから国際平和と安全を危うくする複雑な事態が生じている。

 朝鮮半島の核問題と、それをめぐる地域情勢の激化も例外にならない。

 理事会は当然、このような教理とそれに基づく政策が国連憲章の精神に合致するのかを判断すべきであろう。

 第2に、国連安保理は朝鮮半島の核問題に関連する当事国の対話に対する立場の本質をよく見極めることが重要であると見なす。

 朝鮮半島の核問題は、歴史的経緯からしても、その構成の複合性からしても、責任と解決能力の見地からしても、必要なすべての対話形式を総動員して有機的に結合させて解決することが合理的であろう。

 これまで当事国と関係国の間で提起された双務会談、3者会談、多者会談など各形式の対話を適切に順序を決めて行おうというのが朝鮮政府の立場である。

 去る4月、北京で3者会談が1度行われたので次回は朝米双務会談を行い、その次に再び3者会談やより拡大された多者会談に移ることが効果的であるとわれわれは見なしている。

 ところが米国は、ある形式の会談は行えるが、ある形式の会談は絶対に行えないとの条件をつけている。

 朝鮮半島の核問題に関連してわれわれがもっとも望むのは、この問題をもたらした朝鮮の安全に対する脅威を根本的に除去することである。

 もっとも実質的かつ重大な脅威は、朝鮮周辺の諸国ではなく、米国からきている。われわれが、朝米双務会談に優先的な意義を付与している理由はこれだけである。

 私は、理事会が問題の解決を促すには、どのような立場が問題の解決に実質的な助けになるのかを見極め、それを奨励すべきであると考える。

 第3に、国連安保理が二重基準を適用するかのような印象を与えることを避けるべきだと見なす。

 理事会が核拡散防止条約(NPT)の拡大を実際に重視するなら、すべての非加盟国が加盟することを呼びかけるべきであろう。

 周知のように、NPTの非加盟国は朝鮮民主主義人民共和国だけではない。なかには、イスラエルのように朝鮮より久しい前からもっと濃い核疑惑をもたれている国もある。

 われわれの条約脱退について言うなら、それは条約自体が認めている自主権の行使であって、糾弾する性格の問題ではない。

 理事会が、締約国の脱退手順を規定したNPT第10条に基づく権利の行使を糾弾すれば、それはすなわち国連がNPTそのものを糾弾するのと同じことになる。

 われわれに国際原子力機関(IAEA)との「保障措置協定の不履行」という表現を適用する根拠もない。朝米基本合意文によると、われわれは1号軽水炉発電所のタービンと発電機を含む非核設備が完全に納入された後に、保障措置協定を完全に履行することになっていた。朝鮮がNPTから脱退する時まで合意したその段階は到来しなかった。

 国連安保理が国際法の解釈と執行において二重基準を適用するなら、理事会のいかなる決定や措置も説得力を失うことになり、受け入れ難くなるであろう。

 第4に、国連安保理はいち国連加盟国が他の加盟国に圧力を加えることが国連憲章の目的と原則の見地から見る時、正当であるのかを判断すべき道徳的義務を担っていると見なす。

 米国は現在、われわれに「対話と圧力」を並行する政策を実施している。

 米国の情報資料に基づいて他国が自国の領海や領空を通過する船舶、飛行機を取り締まらせる制度的装置を追求している。われわれの隣接である日本はすでに実践の行動に移っている。

 これは結局、世界最大の兵器輸出国である米国の情報資料が国際貿易取引の不法と合法を分かつ基準に、任意の加盟国に圧力を加えられる基礎になるべきだという論理から発したものだと言える。

 米国の情報資料が公正さを失った政治目的に盗用される可能性いかんについては、すでにイラク戦争で明白に証明された。

 もし、このような論理が国連安保理の支持や黙認のもとに許されるなら、国際秩序は本質的に大きく変化するであろう。

 国連は現在、国連主導の国際秩序を維持するのか、そうでなければ個別の国が主導する危険な世界秩序に席を譲るかという岐路に立っていると言える。

 どんな場合にも、国連安保理は個別の国の一方主義と不当な圧力政策をかばうベールに利用されてはならないというのが国際社会の共通の見解である。

 第5に、国連安保理は朝鮮半島の情勢を考察するにあたって、理事会と深い縁故関係にある朝鮮停戦協定の現実態に必ず注目しなければならないと見なす。

 最近米国は、110億ドル相当の新しい先端武力装備を南朝鮮に引き入れることにした。これは朝鮮に対する武力装備の搬入を禁止した停戦協定第2条第13項に違反する行為である。

 米国は、南朝鮮駐屯米軍武力を再配備することにし、それを機に非武装地帯に対する米軍側の管理責任を南朝鮮軍に渡そうとしている。これは、非武装地帯を朝鮮人民軍と米軍が責任をもって管理するとの停戦協定第1条第10項に違反することになる。

 米国が現在、「船舶と飛行機の取り締り」を通じて追求している朝鮮に対する海上と空中封鎖行為は、「朝鮮に対するいかなる種類の封鎖も禁止」した停戦協定第2条第15項に違反する。

 このように停戦協定が破棄されると、朝鮮半島は再び戦争状態に逆戻りしかねないというところに問題の深刻さがある。

 停戦協定によって戦争を抑止することができるという信頼が崩れると、やむなく他の抑止力への需要が提起されるということはある程度避けられないことであろう。

 私は、国連安保理が今は客観性と公正さを失っていないと見なしたい。

 書簡は終りの部分で、国連安保理が朝鮮半島の核問題を論議する場合、上記の諸問題に当然の注意を向けて理事会の崇高な使命と本分にふさわしく問題の平和的解決を促す公明正大な努力を傾けるものとの期待を表した。(朝鮮通信)

[朝鮮新報 2003.7.5]