朝鮮大学校−学生座談会・修学旅行でみた祖国 |
日本の極右政治家とマスコミの「日朝交流のシンボルである『万景峰92』号を『疑惑の工作船』とでっちあげて、朝鮮とのいっさいの交流を断絶させようという悪質な企て」(浅野健一同志社大教授)により、同船の運航が半年にわたり中断された。運航が再開された8月26日、同船に乗って祖国を訪問した朝鮮大学校の学生たち。彼らの目に祖国はどのように映ったのだろうか。話を聞いた。(李明花記者) 出演者:外国語学部4年宋鐘日、文水蘭、教育学部音楽科2年朴大栄、゙琴喜、短期学部情報処理科2年李起福、金賢祐 半年間の延期、9時間遅れの出発 ―約7カ月ぶりの入港にあたり、右翼たちは騒ぎ警察当局は約1500人で厳戒態勢。国土交通省など関係省庁は、過去最大規模の約400人を動員し、船舶安全性検査「ポートステートコントロール」(PSC)や海上での監視に当たった。 李起福:右翼団体が朝鮮の国旗にばつ印をつけたポスターを掲げ、「帰れ、帰れ」とシュプレヒコールを上げていた。「帰れ」といわれても私たちは祖国に一時的に帰るので…(笑)。 宋鐘日:大勢詰めかけたマスコミが、私の持っていた手荷物まで執拗にチェックしてきたのにはあきれた。後輩からもらった菓子類などのせん別を見てどうするのか。ありもしないことを書きたてようという魂胆だと思うが。代表として何人かの学生とともにマスコミのインタビューに応じたが、日本に戻ってきて新聞報道をみると、「『うれしい』と不自然な笑顔」などと好き勝手に書かれていて腹立たしい。彼らのせいで半年も延期された修学旅行にやっと行くことができて本当にうれしかったのに、そのようにしか見えないのだろうか。 金賢祐:PSCのせいで9時間も待たされながら、抗議団体に「拉致被害者を返せ」とやられた。修学旅行や親せきに会うため祖国を訪問しようとする私たち在日朝鮮人に抗議するのはまったくのお門違いではないかという違和感でいっぱいだった。 徐々に解けた疑問 ―祖国を訪れた感想は? ゙琴喜:拍子抜けするほど平凡だったというか…(笑)。当たり前のことだが、そこには普通に生活する人々の姿があった。そして、素朴でとても温かかった。総聯関連施設へのテロ行為や朝鮮学校生への嫌がらせなど、さまざまな迫害を受けている在日同胞のことをとても心配してくれていた。 文水蘭:家族の中に不安や反対の声もあり、自分自身も祖国に対して良いイメージを持っていなかったので、正直言ってあまり行きたくなかった。祖国で講義を受けた際、講師に「日本で食糧難だという報道をよく耳にする。それなのになぜ人民が『主人公』になれるのか」と聞いた。講師はストレートな問いに驚きながらも、「食糧難の原因の1つには米国や日本の朝鮮孤立圧殺政策がある。朝鮮だけの問題ではない」と丁寧かつ具体的に説明してくれた。日本で感じていた祖国に対するさまざまな疑問を率直に質問でき、そのすべてに講師たちが虚心坦懐に答えてくれたことで、自分の中で祖国に対して抱いていた不信感が一つひとつ解けていった。 朴大栄:非転向長期囚との懇談会が忘れられない。30余年もの間政治犯として南で投獄され、拷問を受けてきた人たちが自分の信念を曲げず、祖国を信じてきた姿をみてどのように生きていかなければならないのかを考えさせられた。また、名門の平壌音楽舞踊大学で作曲の指導を受けることができた。短期間ではあったがとても親身に指導してくれ、講習終了時には教授が、「日本でも引き続き勉学に励み、来年もまた必ず来なさい」と励ましの言葉をかけてくれたことが心に残っている。 宋:朝鮮大学校と連携関係を結んでいる平壌外国語大学を訪問したが、レベルの高さに驚いた。日本のドラマを教材として観賞していた学生から、そのドラマの主題になっていた「いじめ」の概念について質問された。聞くとそのような概念は祖国にはないという。朝鮮社会の健全性を感じた。 李:金策工業総合大学を訪問、サッカー交流もした。祖国の学生はみんな真面目だろうと思って最初は緊張していたが、意外と冗談も言うし、歌もうまい。飾らない温かさにすぐに打ち解けることができた。 金:本場の講師から国語の講習を受け、自分のウリマルがどれだけ日本式になっていたかを痛感。滞在中はできるだけネイティブに近づけるよう日常会話にも気を使った。少しは上達したと思う。 バーガーショップ、大同江黒ビール体験 ―街の様子や人々の暮らしぶりはどうだったか? 文:元山から平壌へ向かう途中など都市部だけではなく、地方のいたるところでも食べ物の屋台が見られたのが印象的だった。下校途中の子どもたちがアイスキャンディーを頬張りながら歩いている姿もよくみかけた。 李:金策工大には最新式のコンピューターが並び、ビジュアルベーシック(プログラムを書いてソフトを作る時に必要なプログラム言語)も進んでいた。私も同じ専門分野を学んでいるが、負けていられないと気持ちを引き締めた。 朴:高級部の修学旅行で行った2年前に比べ、停電もほとんどなかったし、交通渋滞も経験した。朝鮮では犬を食べる文化があるが、平壌ではプードルやダックスフント、リトリバーなどを愛玩犬として飼っている市民も見かけるなど生活の余裕が感じられた。 ゙:面白かったのは、平壌体育館前にある24時間営業のハンバーガーショップに行ったこと。メニューはすべてセットで、内容はハンバーガー、フライドチキン、ポテトサラダ、ジュース、アイスクリームなど。パンは2段と3段とを選択できる。パンがとくにおいしかった。 宋:新しく発売された大同江黒ビールがあっさりしていて飲みやすかった。わらの上に大きなハマグリを並べてガソリンをまいて焼く「焼きハマグリパーティー」も楽しかった。30個食べた女子学生もいた。 みんなに感謝 ―最後にひとこと。 文:一番驚いているのは、修学旅行に反対していた私の家族だと思う。「一緒に行こう」と励ましてくれた恩師や同級生たちに感謝している。 金:とても楽しかったし、一生の思い出になった。祖国の人々に学んだ精神的な強さを自分の糧にしていきたい。 ゙:これからもずっと日本で住むのだから祖国なんて関係ないという人もいるが、祖国の本当の姿を知ればこそ、日本で朝鮮人として堂々と生きて行くことができると思う。 朴:祖国訪問について不安はあったが実際に訪れ、また行きたいと思うようになった。祖国に対して不信感を持っている多くの同胞、日本の人たちに実際に自分の目で見てきてほしいと思う。 李:金策工大の学生たちに負けないようこれからも勉学に励み、卒業後はコンピューター関係の仕事につきたい。 宋:来月朝大で行われる学園祭に多くの日本人大学生を招き、彼らに祖国の現状を伝えることから朝・日友好の礎を築いていきたい。 [朝鮮新報 2003.10.18] |