566の執筆活動、未来志向で−司空俊・朝大文学歴史学部非常勤講師 |
自然地理学(地形、地質)、朝鮮自然地理学(朝鮮の自然改造論)を専攻する司空俊講師(65)。祖国朝鮮との共同研究にも尽力、その成果は朝鮮だけでなく日本の学界からも注目を集めている。1966年、朝鮮大学校に赴任して以来、これまで執筆した論文などは何と566編にも上るという。 とくに、近年発表した「朝鮮の自然地理的条件に関する評価」(水力資源と電力工業の配置の変化、工業都市の形成、鉄道建設、土地改良事業、内水面を利用した淡水養魚など全18編)は、自然条件をいかに効果的に利用して経済を発展させるかを問題提起した、最新の研究成果をまとめたものだ。 内水面(湖、川)を利用した淡水養魚、例えばニジマスの場合、通常5年の生長期間を2〜3年に短縮させる方法などを見つけたという。 専攻の基本は地理学。大学時代、ふとしたきっかけから取り組むようになった。 当時、家庭の経済情況は厳しく、アルバイトをして学費を稼いだ。「家庭教師、豚の飼育など仕事があれば何でもした」が、土方をした際、土を掘ると時々、樹木や植物の葉、貝類などの化石に出くわすことがあった。のちに判明したことだが、実はこれが有名な「手取り層」の化石であった。95年頃にはそこから日本最大の恐竜の化石が発見され、「ビックリした」というエピソードもある。 このようにして化石と出くわしたわけだが、ある日、同胞のおじさんから「大学生だから化石の名前も分かるだろう」と聞かれた。が、「何も知らなかったのが悔しく猛烈に独学をした」。化石をやり出したら地層を知らなければならず、地層を知ろうとすれば岩石について学ばなければならず、またそれを知ろうと思えば地質変動も知らなければならない。これが地理学を始めるきっかけだった。 そして、自然地理、朝鮮の自然改造論を深めるようになり、多数の論文を発表。現在はとくに、化石との因縁が深いからか、約38億年〜約5、7億年とも言われる朝鮮の先カンブリア紀の年代を決定するため、当時の化石を分析する作業を日本の学者らと共同で行っている。 これまでの研究、教員生活を振り返り司空講師は、「つらいことも数多くあったが、常に未来形の思考で行動してきたことが功を奏したのでは」と言う。 今春、文学歴史学部が新設され、学生たちはより幅広く深く専攻を深めることができるようになった。 「教え子たちは全国に散らばって暮らしているが、大学時代に培った民族の心、仲間を大切にして、朝鮮人としての誇りを持って生きていることが心の支え」と語っていた。 [朝鮮新報 2003.7.14] |