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第4回民族教育協議会−4テーマ、対策案もとに討議

 民族教育に対する同胞のニーズを汲もうと発足した民族教育協議会(会長=蔡鴻悦在日本朝鮮人教職員同盟中央本部顧問)の第4回会議が5月31日、東京・上野の東京朝鮮商工会館で行われた。会議では総聯中央が諮問した5つのテーマ中、残る4テーマに関する対策案が事務局から発表され、討議が進められた。今後はテーマ別に分科会を設け、総聯中央常任委員会に提出する建議案作りに取りかかる。

助成金の研究チームを

生徒数、運営…直面する課題にどう取り組むかを話し合う協議会メンバー

 対策案が発表されたのは、「民族教育の権利を拡大する運動を繰り広げ保護者の経済的負担を軽減し、民族教育をめぐる有利な環境を整えていく方策」(テーマ2)、「変化する環境に見合う学校教育網の再編成、とくに高級学校学区網を再整備し、特色と魅力あふれる学校に作るための方策」(テーマ3)、「すべての同胞の子どもたちに対する民族教育の保障措置とその対策」(テーマ4)、「在日同胞の子どもたちの民族性を育むための学校前教育、とくに幼児教育と幼稚班教育を実施する方策」(テーマ5)の4つ。

 テーマ2の民族教育権利について事務局案は、朝鮮学校に対する国庫補助が皆無、卒業資格が認められていない原因として朝鮮学校を規定する法律がないことをあげ、ほかの外国人学校や日本市民らと連携し、外国人学校法を成立する運動を進めることを提案した。

 これに対して委員からは、「民族教育の自主性を守るうえで、法律制定のメリットデメリットを考えるべき」「朝鮮学校に私立並みの助成を支給する法律がないので地方の運動にも限界がある」などの意見が出された。

 事務局案では、助成金、国立大学の受験資格、税制上の優遇措置、各種国家資格の受験資格など、直面する権利課題を解決するためにも各地の運動を活性化させるべきと述べられたが、その対策として「中央に運動事務局を設置し、現行法で教育助成を獲得する研究をし、地方に還元すべき」との意見も出された。

 自治体の緊縮財政が続く中でも助成金アップをはかっている大阪の委員は、「教育の質、生徒数減少、運営基盤の確立など朝鮮学校が直面する深刻な問題を解決するうえで教育権利問題は諮問テーマの中で重要な位置を占めることを確認すべきだ」としながら、同胞の権利意識が向上したことで、府が「朝鮮学校は各種学校より上」との判断を示し、日本の高校と同額の授業料軽減補助が適用されていることを報告した。

魅力ある学校作り

 現在、いくつかの地域で教育網の再編成が検討されているが、テーマ3の対策案では再整備を進める原則として、@学校が同胞社会の求心力であることを大前提とし、地域の実情と同胞の意思を尊重するA教育の質と実効性を高めるB児童、生徒数を増加し、教員陣営を整備するC自立した学校運営の構築をめざす―を掲げた。再編成作業を進めている地域の委員は、「学校を守ってきた1世や保護者の中で、再編成の必要性について徹底した討議がなされなければ進められない」と発言。現場を担う教員の中で自由な討議が進めることが大事との発言もあった。

 とくに朝高学区網の再編成に関しては、学区が都道府県をまたがるだけに総聯中央教育局と日本各地の教育関係者がともに考える場を設けるなど、広範な同胞の意見を収れんしていく過程が必要だとの提案もあった。また、「中途で日本学校へ転校する生徒が増えている現実は、朝高、朝大をより魅力ある学校にすることを要請している」との意見も出された。

大阪の経験生かそう

 すべての同胞の子どもに民族教育を保障する問題について(テーマ4)の対策案には、同胞の子どもの多くが日本学校に通っている現状から、民族学級や朝青の土曜児童教室の重要性を確認し、東京、神奈川、愛知、兵庫、福岡などの同胞多住地域の公立学校に民族学級を、すべての総聯支部に土曜児童教室を設けることが盛り込まれた。

 大阪では民族学級の数が年々増えており、とくに大阪市内では94校(03年5月現在)の公立学校に設置されている。学級で学ぶ児童、生徒は2000人。これは府内の民族学校の生徒数を上回る数だ。大阪の委員は、増加の要因として大阪市が在日外国人教育基本方針を策定し、不十分ながら民族学級が制度的に保障されていることをあげ、講師陣ら推進母体の重要性も指摘した。

 委員からは、「総聯が同胞により開かれた学校作りを打ち出したからには、民族学級と朝鮮学校の交流を進めるべきだ」「大阪の経験を生かし、各地でその可能性を探っていこう」との意見が寄せられた。

 テーマ5の民族性を育む学校前教育については、人間教育の基礎となる幼稚班教育の重要性が述べられた後、幼児教育と幼稚班教育を組み合わせた「ウリ式幼児教育」を施すための方策案が発表された。

 具体的には、@新「幼稚班保育要綱」の制定A幼稚班教育と幼児教育の配合B教員の再教育制度C保育士資格取得を前提とした朝大のカリキュラム編成D同胞社会の支援、自治体の補助の拡充をあげている。

 次回の会議(7月26日)からは分科別に討議が行われる。(張慧純記者)

[朝鮮新報 2003.6.5]