鄭大聲特別講師、朝鮮の「食の科学と文化」テーマに朝大で初講義 |
「食文化には生活の知恵が込められている。私たちが日頃口にしている食物には、どんな知恵が込められているのか」と、熱っぽく語るのは、本紙、健康・家庭欄「朝鮮の食を科学する」でお馴染みの滋賀県立大学・鄭大聲教授。 この春から、朝鮮大学校に新設された2年制の短期学部・生活科学科で、特別講師をすることになった。 鄭教授が朝大で教鞭をとるのは23年ぶり。生活科学科では、朝鮮の「食の科学と文化」をテーマに1年間講義する。 同学科は、日本で育つ新世代が生活面から民族性を培うことを目的として、衣食住と関連した民族的な知識を学ぶためのカリキュラムが組まれている。 鄭教授は新しくスタートする同学科の授業に先立ち、「この授業が、単に女性の『しつけ』教育になってはならない」と指摘。「朝鮮文化に対する理解を深め、その科学的根拠を習得したうえで、今後日本で生活を営んでいくのに役立ててくれれば」との思いを伝えた。 現在、日本には約2万4000店の焼肉店が存在する。その火付け人となったのは在日1世のハラボジ、ハルモニたち。在日1世たちが生活のためにと始めた飲食店が、今や空前の焼肉ブームをひき起こし、日本外食産業に大きな影響をあたえるほどになった。かつては「朝鮮人、にんにくくさい」と蔑まれていた朝鮮料理が、ヘルシー、ダイエットにも効果あり、と、見なおされる時代に。 「食べるという毎日の営みの中で、長い歳月を経て生活に定着した食文化は、幾度となく失敗を繰り返してできあがった。これぞ生活と文化の結晶体である」「食は生活の知恵のかたまり」「キムチが日本に根づいたのも、それが体に良いという価値が認められたから。プルコギしかり、明太子しかり…」。 鄭教授は、食材のルーツと科学的効果、朝鮮の食文化などをかいつまんで説明。そして、それらがこんにちの日本の「食」に影響を与えていることを裏付ける各種データーも加えて紹介。キムチと唐辛子について話す途中、「条件反射で汗が出る」と、額にハンカチをあてると、生徒たちは笑い声をあげた。 「これから先、民族性を守っていくのに、毎日食べる『食文化』に関心をもってくれたら良いと思う。キムチ、ピビンパプ、プルコギを、ただ美味いと食べるのではなく、それに関する知識を持ってもらいたい。スパゲッティ、ピザを食べるのも良いが、朝鮮の料理も好んで欲しい」と、鄭教授は願う。 今後授業では、にんにく、キムチ、唐辛子など食材のルーツと効能のほか、朝鮮の肉食文化、調味料、麺料理、飲料文化、保存食品、そして、食文化の歴史についても触れていく。 新入生たちは「いままで知らなかった朝鮮料理の歴史について知ることができて興味がわいた」(姜明喜さん)、「朝鮮の焼肉が日本に定着したことを知っておもしろかった」(李鮮華さん)などと初講義の印象を話していた。(金潤順記者) [朝鮮新報 2003.4.26] |