30余年の伝統土曜児童教室−民族の代を継ぐ青森同胞 |
東北6県の最北に位置する青森県。現在、約1300人の同胞が暮らすが、青森には朝鮮学校がないため、子どもたちが朝鮮学校に通うには、青森市から5時間以上離れた宮城県仙台市にある東北朝鮮初中高級学校で寮生活をすることになる。しかし、寮生活には抵抗を感じる保護者が多いのも現実。そのため、日本の小学校に通う子供たちを対象にウリマル(朝鮮語)を教える総聯青森・青森支部(青森市、弘前市を網羅)の「土曜児童教室」(30余年運営)と、日本学校と朝鮮学校に通う同胞生徒が一緒に参加する「林間学校」(昨年で21回)は、子どもたちに民族の心を植えつかせる大切な場となっている。総聯青森県本部の金致男委員長は、「青森の同胞たちは、子供を『朝鮮人として育てたい』という気持ちの強い人たちばかり。その思いを少しでも解消しようという場が、土曜児童教室と林間学校だ」と語る。 八戸や弘前からも
土曜児童教室(前身は午後夜間学校)が開校されたのは1960年。当時は県内8カ所で運営されていた。帰国運動が進む一方で、朝鮮学校に通えない子どもたちを対象にウリマルを教え、民族心を育み、民族の代を受け継いでいこうという同胞たちの熱い思いから出発した。その後、教室は青森支部運営のみとなったが、支部で同胞の集まりをウリマルで進行することができるのは、教室が存在してきたからだ。 授業は土曜の午後に2時間、総聯本部の事務所で開かれ、ウリマルの読み書き、朝鮮の歌、チャンゴの叩き方などを習った。八戸や弘前市など遠い地域から学びに来る生徒や、就学前の子供もいた。 同教室の卒業生で、中級部から高級部まで朝鮮学校に通い、その後、教室の講師を務めた金正淑さん(27)は、「教室で学んだ子供たちがウリマルを使い、ウリトンムと過ごす楽しみを感じ、『ウリハッキョに行きたい』と言ってくれた時、一番やりがいを感じる」と言う。 卒業生が教員に 「林間学校」は、青森県の教育会と朝鮮学校に子どもを送っている「青森県同胞学父母会」の後援で毎年夏に行われている。県内の朝鮮学校生徒と日本学校に通う同胞生徒が一緒に参加するキャンプだ。スケッチなどの野外授業やキャンプファイヤー、焼肉パーティーなどが行われ、日本の学校に通う子供たちにとってはウリトンム(同胞の友達)を作る大事な空間となっている。また、父母間の交流を深められるのも特徴だ。 総聯青森支部の金熹均委員長は、「林間学校に参加することによって、父母らの子女教育に対する意識が着実に高まっている。子どもをさらに『夏期学校』に通わせたり、『同胞夜会』などにも参加するようになっている」と強調する。 児童教室、林間学校に参加し、初級部5年から朝鮮学校に通ったという金炳孝さん(24)は現在、母校の東北初中高で教べんを取る。「幼いころから寄宿舎に入るのは辛かったが、親も送るのはつらかったと思う。しかし、そうした過程を通じて民族に目覚め、今では子どもたちに民族教育を教えられるようになった。自分にとって児童教室は、民族のことを知り、朝鮮人として生きていく第一歩となった」と言う。 なお児童教室は講師の他県への引っ越し(結婚)のため、今春から一時休校するが、林間学校は引き続き行われる。(金明c記者) [朝鮮新報 2003.4.7] |