「在日」「民族」テーマにアジアや世界に窓を開けて−東京朝鮮第5初中と下関市立長成中、広い視野で多角的な学習 |
「21世紀を切り開いていく子供たちに平和、共生をどう教えるか」。期せずして先頃、東京の朝鮮学校と山口の中学校でそれぞれ人権教育や平和を考えさせる学習が行われた。9.17以降の朝・日関係の悪化の中でも、平和と歴史の共通認識を持てば、広い視野に立って中学生でも理解しやすい授業が可能であることが確認された。 拉致の洪水報道がきっかけ
その一つ2月15、16の両日、東京で開かれたJAPAN−KOREAワークショップで東京朝鮮第5初中の金聖蘭教員が発表した「メディア報道と在日コリアン」の報告。 金さんは9.17前後の日本の反北騒動に心を痛め、中級部1、2、3年生の美術の授業で、「在日」「民族」をテーマにした絵と文を通して、子供たちに事実を多角的に認識させ、自分の頭で判断する力をつけさせた。 その成果として子供たちは日本のメディアの洪水報道を冷静に受け止め、旺盛な批判精神を持つようになった。 「北朝鮮がごはんを食べられないからってそれをばかにするのは、本当に悪いことだと思います。食べられない国があるなら助けてあげるのが普通なのにテレビでじゃがいものケーキをわざわざ作って食べてまずいだの、味がないだのと言ってているのを見て、(こんなことをして楽しいかな?)と不思議に思いました。それと、なんで私たちのような在日朝鮮人がいるのかを学校で教えてほしいし、テレビでも過去のことについて伝えてほしい。日本の過去を棚に上げないでほしい」(中3女) 「『朝鮮』と言う国について報道するのはまだ、許せます。けれど、朝鮮の子供たちについて、変に言うのはやめて下さい。食べ物がないなど色々報道したり…。っていうか、大人げがないです。それらを変に報道する時間があるのだったら、もっと日朝関係は、どうしたら発展するかなど、私たちにインタビューするか、色々調べるかして、報道した方がいい。朝鮮に帰れと言われても、私はそのまま住みつづけることになるでしょう。日本で平和に暮らせる環境を壊してほしくない」(中3女) 「確かに朝鮮は悪いことをしたが、それ以上に日本も悪いことをした。だから、日本の人は昔のできごとをしっかり分かって発言してほしい」(中3男) 在日同胞を招き交流 一方、下関市立長成中学校1年生120人全員の「総合的な学習」の時間で、在日朝鮮人を招いて交流学習が行われたのは、1月31日。ここには、強制連行の調査活動を続ける「東録さんや金静媛さんらが、近代の朝・日関係史や文化、食、暮らしなど幅広いテーマで約4時間にわたって子供たちに話を聞かせ、楽しく交流した。 「さんは「拉致問題」の悲痛と共に、「21世紀を生きる子供たちへの願い」として、「戦争は絶対にいけない。対話を通じて仲良しの国になるよう努力してほしい」「事実を知らないと偏見や対立、差別が生まれる。知ることで、信頼と友情が生まれる」と熱っぽく訴えた。 この学習から約1カ月後、同校から子供たちの一生懸命につづられた感想文が「さんの元に寄せられた。 「「さんのお話、とてもよかった。隣の国同士なのにどうしてケンカをしてしまうのか、全く分かりません。私が大人になって、もしできるのなら、隣の国同士仲良く、協力し、助け合っていける文化を作りあげたいと思いました。もう一つ印象に残ったのは、アリランの歌です。私は小学生の頃、一度歌ったことがあるが、私は韓国の曲の中でアリランが一番好きになりました。1月31日にあったことは、私の心の中にずっと残っています」(1年女) 「「さんたちから朝鮮侵略のことなど詳しく教えてもらって、朝鮮の人たちがどういう大変な目にあっているかのかが分かりました。また、どうして在日朝鮮人の人たちが日本に来たのかも分かりました。「さんが戦争はいけないことだと言ったのは僕も本当だと思いました。また、差別などで人に苦しみを与えるのも悪いことだと思いました」(1年男) 2つの学校の試みを通して見えてくるのは、事実から目を背けず、平和や人権、国際交流の視点に立てば、「自閉的な歴史観」ではない、アジアや世界に窓を開けたバランスの良い教育が可能であることを示している。(朴日粉記者) [朝鮮新報 2003.3.31] |