子どもが自信持てる環境を−大阪府民族講師会教育研究集会から |
「すべての同胞に民族教育を−」。この目標を掲げ、日本の公立学校に通う同胞の子どもたちに放課後の一時間、民族の言葉や歴史、文化を教えて来た大阪の民族学級は現在府内に180校。放課後の週1時間、朝鮮にルーツを持つ3000人の子どもたちが学んでいる。2月22日、長橋小学校民族学級開設30周年を記念して行われた第4回大阪府民族講師会教育研究集会では、国際結婚の増加に応じた教育実践や公立学校における民族教育権の保障など民族学級を取り巻くさまざまな問題が話し合われた。 同胞同士の結婚が減少し国際結婚が増加傾向にある中、日本国籍を持つ同胞の子どもが増えている。国籍が日本、そこに加え日本名を使った場合、名簿上彼らが朝鮮にルーツを持っているかどうかは確認できない。研究集会では、彼らダブルの子どもたちの存在をどのように把握していくのか、ということが大きな課題として取り上げられた。 「総合教育と民族教育」をテーマにした第3分科会では、全校児童数の12%の子どもが朝鮮にルーツを持ち、そのうち27人が毎週金曜日の民族学級「ヘバラギキョシル」に参加している大阪市立啓発小学校の実践が発表された。 民族講師の姜智子さんと同校の石井宏享さんが共同で取り組んだ教育実践を発表。国籍、家庭環境、体の特徴、障害、年齢など、違いを話しあうゲームや、それぞれの違いに自信を持つための1分間スピーチ、お国自慢大会などを通じて民族学級に参加するのをためらっていた児童の変化を促したことについて報告した。保護者が民族学級に否定的な反応を示していることが壁になっていたが、教師がルーツを率直に受け止めるようにしたいという思いを告げ、親の差別体験にも耳を傾ける過程で信頼を築いていった。 石井さんは、「子どもの将来を憂うがあまり、『帰化』する保護者も多いが、そこに目を向け、当たり前のことを当たり前のこととして実行していくよう子どもたちを育てたい」と語る。 民族学級は増えつづけているが、市内の公立小中学校全体から見た場合20%。また府内の公立学校に通う児童、生徒の本名使用率は10%に過ぎない。 民族講師らは全校生の10%が朝鮮にルーツを持つ場合、民族学級の設置を求めているが、ネックになっているのは民族講師らの身分保障だ。 民族学級講師は現在約50人いるが、朝から夜遅くまで働いても支給されるのは時間給のみ。大阪市が97年から「民族クラブ総括技術指導者」(嘱託職員に準じる身分)として民族講師を採用する措置をとり、制度保障への道が開かれたが、予算が限られるため講師らが手弁当で運営する厳しい状態が続いている。 大阪市民族講師団共同代表の朴正恵さんは、「制度的に保障されなければ、講師は長続きせず授業の質も保たれない。実労働に見合った処遇が急務だ」と話す。 [朝鮮新報 2003.3.7] |