朝鮮近代史偽造を正すために力注ぐ−康成銀・朝鮮大学校歴史地理学部学部長 |
朝鮮近代史を専攻する歴史地理学部学部長の康成銀教授(52)は、植民地史観を克服し、朝鮮歴史の誤った記述を正すための研究に余念がない。昨年末に発表した論文「『乙巳5条約』研究」では、日本に強要され、外交権を奪われた「乙巳5条約」(1905年)の不当性、不法性について新史料などをもとに証明し、日本が主張する同条約や植民地支配を完成させた「韓国併合条約」など旧条約の「合法論」を論破した。歴史の事実を政治学、国際法学の視点から総合的に追及した点は意義深い。 とくに新事実として、「日本外交文書」−「伊藤特派大使復命書」の草案を国立国会図書館から探し出し、その草案と復命書(命令を受けてした仕事の結果を、命令した人に出す報告書)を比較。朝鮮皇帝が「乙巳5条約」に同意したかのように日本側が復命書を偽造したことを立証した。日本では旧条約の関連文書の多くが非公開で、公刊された史料も偽造されている。新事実の発掘は難しい。しかし、「1次史料を発掘し、それに基づいて研究するのは研究者として基本的なこと。そのことによって隠されていた事実が明らかになる」と強調する。 2001年11月には、世界の学者らが「韓国併合」問題を論議する初の学会(米・ボストン)でも論文を発表。朝鮮に対する日本の植民地支配の事実について、あらためて大きな関心を引き起こすことにもなった。 こうした研究のかたわら、在学生および非常勤講師を務める日本の大学生たちに国交正常化の際に結ばれる「朝・日条約」(仮称)の草案作成を提起。史実を深く研究した、真の友好親善を実現するための案が提出されたという。 教育現場では、冷戦時代の分断イデオロギーを克服する歴史認識をいかに持つかという点に大きな力を注いでいる。 「北と南、海外同胞が共通の歴史認識を持つことが朝鮮統一に欠かせない重要な課題。とくに同胞の場合、植民地支配の大きな被害者、分断の被害者でもある。それをバネに植民地史観・分断イデオロギーを克服し、伝える義務も背負っている。つまり北と南、朝鮮半島と日本、そして国際社会をまたにかけ、歴史認識を確立していく役割を果せるということだ」。 昨年3月には中国・南京で開かれた第1回「歴史認識と東アジアの平和フォーラム」に参加。2月27日から東京で行われた第2回フォーラムでも報告した。 「歴史を研究するのは過去を知り、現在、未来を見つめ、平和な世界を築いていくためでもある。ようは人間関係、歴史の価値観の差をいかに埋めていくかだ」と語る。ぼう大な資料がこまめに整理整頓されている研究室が印象深かった。 [朝鮮新報 2003.3.3] |