子どもたちの情緒教育のためにと滋賀朝鮮初中級学校オモニ会が運営する「オモニ文庫」 |
滋賀朝鮮初中級学校に設置されている「オモニ文庫」。子どもたちに本に親しんでもらい、情緒教育に役立てばと、1990年から同校のオモニ会が運営してきた。毎週火曜日と土曜日の12時半から1時20分まで、子どもたちに貸し出しを行っている。 10数年の活動 当日、12時半になると、同校2階にある「オモニ文庫」は園児や低学年の子どもたちでいっぱいになる。子どもたちはこの日をよほど楽しみにしているようで、すべての本に目を通しながら読みたい本を厳選している。
「バザー、そして運動会の時の飲食物販売などお金を集めるのだけではなくて、オモニ会として学校のためにできることがもっとあるんじゃないかと思って始めたのが、これなんです」と話すのは当初から文庫に携わってきた辛永和さん(43)。 大津市図書館で月に一回、団体向けの貸し出しを行っていると聞き、さっそく訪ねた。しかし、大津市文庫交流会に加盟しないと貸し出しを受けられないことがわかった。 そこで、「オモニ文庫」を設立、その団体名で交流会に加盟し、毎月200冊の本を借りることができるようになった。これまでの総数は、1万冊をくだらないという。 一見、単純そうな仕事に見えるが、毎月図書館に出向き大量の本を借りてくるというのは、オモニたちにとってはかなりの重労働だった。それでも、都合のつくオモニたちが進んでその役割を買って出て、図書館を訪れた。なかには妻のがんばる姿に感動し、進んで手伝うアボジたちも出てきたという。 その一方で、交流会にも積極的に参加するようにした。昨年8月、交流会主催のフェスタに中級部生徒らが参加し、「チャンダンノリ」を披露した。また年に数回、人形劇や演劇、お話劇なども催した。 「オモニ文庫」の責任者、金東瑛さん(36)は、「こうした活動を通じて私たちに対する偏見が少しずつなくなり、民族教育を理解してくれるようになった」と語る。今では、「オモニ文庫」が交流会を引っ張っていくリーダー的役割を果たすようになっている。 本購入、部屋も整備 こうした「オモニ文庫」の10数年に及ぶ活動が、市図書館館長の目に止まった。そして館長は、子ども文庫や児童図書館、その連合体など児童の読書啓発、指導などを行っている団体や個人に助成を行っている(財)伊藤忠記念財団の助成金を申請することを勧めてくれた。
申請書を提出したところ、それまでの功績が認められ一昨年、80万円の助成金を手にすることができた。 「オモニ文庫」はその80万円で423種類、513冊の本を購入、残りの金で本棚、部屋の電気工事などを行った。同時に本をきれいに保管するため、ブッカーを張る作業に取り掛かった。 作業にはオモニ会メンバーだけでなく、アボジや朝青員、同校卒業生たちも参加、週2回学校を訪れ、総出で取り組んだ。 「これまでは『役員になったら協力すればいい』という若いオモニたちが多かった。しかし『オモニ文庫』の活動を通じて、そのような考え方に徐々に変化が表れ、みんな積極的になってきている。今では、進んで役員を引き受けるオモニが増えた」(辛永和さん)そうだ。 また、「財政問題を同胞社会内だけで解決するのではなく、日本の人たちからも協力を得るという発想の転換にもなった」(金東瑛さん)。オモニたちの間からは、「忙しいけど充実している」「関わってみると、どんどん何かしたくなる」との声が多く聞かれるという。 「『オモニ文庫』の活動を通じてアピールすることの大切さを実感できた。これからも時間を割き智恵をしぼってバージョンアップを目指したい」と金東瑛さんはほほ笑んだ。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2003.2.18] |