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宋都憲・学友書房副社長に聞く

 教科書改編のポイントについて「教科書編さん委員会」事務局長を勤める学友書房の宋都憲副社長に話を聞いた。

なぜ改編か

 新しい教科書には21世紀にも日本で同胞社会を守り、しっかりとした民族自主意識を持った子どもたちを育てていこうという意志を込めた。すべての科目で民族性を前面に押し出したのはこのような理由からだ。同胞社会で3、4世が多数を占め、5世が登場しているなか、同胞社会は民族性の希薄化、喪失という深刻な現実に直面している。さらに朝鮮半島をめぐっては「6.15北南共同宣言」や「朝・日平壌宣言」が発表されるなど新たな時代が到来している。科学技術の急速な発展、情報化、国際化の加速化も進んでいる。

 同胞の子どもが自らのルーツを肯定し、人生を自主的に切り開く力を育むためには、新しい時代に対応した民族性の育成が急務だ。

 通常、海外で育つ同胞の子どもの場合、民族性は自然に身につくものではなく、家庭と学校における目的意識的な教育を通じてのみ獲得できる。民族を自覚、意識する初中級の課程はとくに重要だ。

教員の質向上を

 今日、同胞の多くは、朝鮮人に対して歴史的に形成された偏見と蔑視、差別が残る日本社会においても、子どもたちに豊かな民族性を与えたいと考えている。また、卒業後も安定した職業を選択し、北南朝鮮、日本や国際社会でユニークに活躍する資質を身につけてほしいと望んでいる。

 民族性に加え日本や国際社会で通用する力を兼ね備えた人材の育成は同胞が民族教育、朝鮮学校に望む最大公約数的なニーズではなかろうか。93〜95年の改編の際にも同胞のニーズを強く意識したが、朝鮮学校に対する同胞のニーズはより明確になっていると思う。

 10年前に教科書を作り変えた後、現場の教員から意見を聞き、現行教科書の優れた点と欠点を分析し、改編の方向性を探ってきた。また、ブロック別、中央レベルで行われる教育研究大会を通じて教科書を教育現場で生かすための方法を検証してきた。

 人材育成の要は教員の資質だ。現場の教員には新しい教科書の教授方法を意欲的に研究し、他の学校とも経験を交換して欲しい。われわれも、参考図書、教材の充実にもつとめる考えだ。

 最後に、03年度から始まる「週5日制」の問題と関連して地域の同胞にお願いしたいことがある。「週5日制」を取り入れるのは、児童、生徒たちにいろいろな経験をさせ、社会性を育てるためだ。各地にはさまざまな能力や知識を持った同胞がたくさんいる。講義や特別授業を受け持ってもらえないだろうか。児童、生徒たちの視野を広げるため、協力して欲しい。

 1936年愛知県生まれ。東京大学卒。60年から東京朝鮮中高級学校教員、総聯中央教育局指導員、東京中高校長を経て86年から学友書房副社長兼編さん局長。

[朝鮮新報 2003.1.23]