日本の民族差別政策に警鐘−人権協会連続セミナー「未来を考える」 |
在日本朝鮮人人権協会が昨年5月から主催してきた連続セミナー「在日朝鮮人の人権と民族的アイデンティティー」。その最終回となる第5回「未来を考える」が4月26日、東京・池袋の東京芸術劇場で行われ、同胞、日本市民120余人が参加した。「私はこう考える−在日朝鮮人社会、日本社会…真の共生とは−民族学校差別と愛国心通知表が象徴するもの」と題したセミナーでは、朝・日4人の報告者が、自らの実体験などを交えながら在日朝鮮人を取り巻く日本社会の現状と問題点を分析。真の共生への可能性を提示した。 公教育で同化
セミナーでは、人権協会会員で福岡県在住の李博盛弁護士、「在日コリアンのこどもたちへの嫌がらせを許さない若手弁護士の会」代表の杉尾健太郎弁護士、ARC(Action for the rights of children)代表で子どもの人権連代表委員の平野裕二氏、人権協会事務局の金東鶴部長がそれぞれ報告。外国人学校の受験資格問題、朝鮮学校児童、生徒への嫌がらせなど最近の民族学校差別と、福岡県下の一部小学校で実施されている「愛国心通知表」からみる日本社会の現状と問題点を実体験にもとづき分析した。 李弁護士は「通知表」からみる日本の排他的ナショナリズムについて、福岡市立の日本学校に子どもを通わせるなかで体験した事実をもとに報告。「朝鮮学校に対する嫌がらせメールと同じことを学校が堂々とやっている。公教育で同化に拍車をかけようとするのか」と、日本社会の差別政策に対して警鐘を鳴らした。 杉尾弁護士は昨年9月以降頻発した朝鮮学校児童、生徒への嫌がらせについて、関東の全朝鮮学校を対象にアンケート調査を実施。暴行、暴言の原因は在日コリアンに対する無知から来ているとしながら、「相手も生身の人間だということがわかっていない。歴史を正しく認識し、違いを認めることは日本の国益にもかなうこと」と述べた。 また、平野氏と金部長が、外国人学校の大学受験資格問題について、それぞれの立場から発言。平野氏は、国連人権諸条約を挙げながら、「国際法の見地からみても、何の合理的根拠もない」と文部科学省の方針を批判した。 金部長は同問題の経緯と現状、また無年金などその他の社会的差別についても述べながら、「大学受験資格問題と関連し、日本の国立大教授をはじめ多くの日本市民が声をあげてくれた。そのような連帯のなかで互いの良い面を引き出していくよう努力することが、共生への可能性につながるのでは」と提起した。 南からの留学生で東大で学ぶリ・ハンジュさん(22)は「過去何十年もの間、そして今も直面している民族差別について話を聞くことができ、大変勉強になった。同じ同胞として力になっていきたい」と感想を述べていた。 共通認識を提示 連続セミナーは、在日朝鮮人を取り巻く諸状況が大きく様変わりしていくなかで、その民族的アイデンティティーをどのように構築していくべきか、ともに考えていこうと昨年5月から行われてきたもの。民族教育、福祉、社会的差別、日本政府の外国人政策をテーマに取り上げてきた。 同協会の柳光守会長は「現状と課題について、とくに若い世代に一定の共通認識を提示できたことはひとつの成果。いかに社会が変わろうとも、朝鮮人であり続けるためには人権と民族性が保障されなければならない。一方でその実現のためには民族性を大事にしながら、日本社会、日本国民との共生といった課題にこれからも真摯に取り組んでいく必要があると考える」と述べた。 [朝鮮新報 2003.5.1] |