在日本朝鮮人人権協会主催第3回公開学習会行われる |
在日本朝鮮人人権協会(以下、人権協会)が主催する公開学習会の3回目「どうなる、どうする同胞社会−各種データを通して見た現状と課題」が12月6日、東京上野の朝鮮商工会館で行われ、人権協会会員や一般の同胞ら70余人が参加した。同学習会は昨年5月から1年間、民族教育、福祉など在日同胞社会における諸問題を取り上げてきた連続セミナー(5回開催)に続くもので、今年8月から「在日朝鮮人の民族的アイデンティティーと共生」を共通テーマに、2カ月に1度、行われてきた。夜には今年を締めくくる忘年会も催され、同協会の柳光守会長は、「もっと同胞社会に貢献していこう」と呼びかけていた。 柔軟な民族定義を
この日は、人権協会理事で朝鮮大学校政治経済学部教員の金哲秀氏と朝鮮大学校政治経済学部教員の呉民学氏がそれぞれ基調報告、参加者らによるリレートークが行われた。 まずは、「各種データに見る在日同胞社会」と題して金哲秀氏が報告を行った。 人口動態や意識調査の結果に基づいた同胞社会の現状分析、それを踏まえた上で今後の同胞社会についての展望などを話した。 「90年代に入り、特別永住者が急激に減少している。70、80年代とは比べものにならない」と金氏。 02年末現在、外国人登録上の国籍欄が「朝鮮」「韓国」表示の在日同胞数は62万5422人で、減少が続いている。同国籍表示の在日同胞人口の推移に変調が見え始めたのは1992年。一貫して増加傾向にあった在日同胞数は、91年の69万3050人をピークに減少傾向へと転じた。ピーク時から02年までの減少数は6万7628人にのぼる。なかでも「特別永住者」が目立ち、ここ10年間の間に9万9990人も減少し、50万人を切ったという。 その理由としては、@日本国籍取得者の急増A日本国籍者との婚姻の影響B出生率の低下などが上げられる。「朝鮮」「韓国」国籍表示の在日同胞数の減少は低年齢層、未来を担う若い世代の層で著しい。また、ニューカマーの増加と定住、「ダブル」の子も増え続けている。 金氏は、最後に@幅のある在日同胞像を描くA共生社会の構築B祖国の動向を見据えた展望が必要−の3つを問題提起し、「このような在日同胞の人口構成における変化を踏まえたとき、在日同胞社会を描いていくには民族の再定義が必要だ。自民族を大切にしながら多様な文化を吸収し自分自身を豊かにする、柔軟な民族定義が求められる」と強調した。 就業状況に変化 呉民学氏は、「在日朝鮮人の就業状況の変化と同胞企業の経営状況について」と題して報告を行った。 まず初めに「在日朝鮮人の就業者数は95年統計をピークに減少に転じている」と呉氏。 85年の在日朝鮮人の就業者数は、24万3120人。95年の26万6623人をピークに、00年には25万5880人に減少した。 その要因としてはまず、「『朝鮮』『韓国』籍を有する永住者人口そのものの減少と労働力人口の減少と思われる」 2つ目に「商工業者が階層分化し雇用者化している」と指摘。「商工人」層は明確に減少し、在日の雇用問題が大きな問題として浮上していると述べた。 3つ目に「在日社会においても日本の就業構造変化と同じで、製造、建設分野の縮小、サービス分野の増大が起こっている」。以上3つの変化から提起される問題として、大きく次の2つを挙げた。 @在日社会における雇用機会をどのように解決していくのかA望まれる在日朝鮮人ネットワークの形はどのようなものか。 最後に、現在の同胞企業の経営状況から考えるべき点として、@同胞企業も日本の景気を色濃く受けているA過当競争分野や許認可制度、流通慣行上タイムラグが慢性的に生じている分野があるB資金調達や信用は一貫して厳しい状況にある−の3つを上げた。 呉氏は、「今後、少数永住外国人としていかに共生していくべきか。2050年には朝鮮民族(南北計)の人口は8000万人、2100年における日本の推定人口は6700万人になると言われている。2080年前後には総人口の逆転が起きる。『日本国内の少数派』と『地球規模での拡大』をどのように考えるかが重要だ」と強調した。 リレートークでは、コリアンシニアネットワーク事務局長の李庚浩さん、金舜植弁護士、朝日KPMG税理士法人の朴成美税理士が発言し、それぞれの立場から在日同胞社会への提言を行った。 金弁護士は、「可能性を持った人材が多く、これから在日が果たす役割は大きい。どの立場からでも今後の在日社会にどれだけプラス意識を持てるかが重要になってくる」と話していた。(金明c記者) [朝鮮新報 2003.12.15] |