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〈第6回中央オモニ大会各分科会から〉 子どもたちをどう育てるか

 「子どもたちをどう育てますか?」をメインテーマに3日(西日本、神戸朝高)と8日(東日本、東京朝中高)に開かれた第6回中央オモニ大会では、7つの分科に分かれてそれぞれ白熱した論議が繰り広げられた。各分科会について紹介する。(本紙取材班。なお、学齢前児童、子供の自立A、福祉、オモニ会、民族教育権利は東日本大会、子供の自立@、思春期は西日本大会で取材)

幼児期分科

 幼児期の大切な時期に母親が果たすべき役割を考え、暮らしの中で簡単に取り入れられる民族的な遊びを紹介する目的で開かれた同分科会は、講演とお遊びの2部構成で進められた。

 講演は小児科医の金年和さんが出演。「アトピーなんかに負けないぞ」と題して、アトピー性皮膚炎の本態や、薬やスキンケアなどに対する正しい知識などについて解説した。薬の塗り方については、場内のオモニたちと質疑応答をしながら、実演も交えてわかりやすく説明した。キムチの効能に関する話も場内の関心を集めていた。

 また、1歳、2歳、3〜6歳に分けて子どもの心の変化について述べながら、母親が果たすべき役割について語った。例えば、1〜3歳の場合は、理屈を並べて子どもを混乱させるのではなく、やるべきこととやってはいけないことを簡単に話し、態度で示すことが大切といった具合だ。金先生は、子育てで何より大切なのは「愛情」だと強調した。

 遊びのコーナーでは、ピビンバレンジャーが登場し、子どもたちを喜ばせると同時に、「民族的なヒーロー」として朝鮮語を教えるなど、楽しく遊びながら民族性が身につくような工夫が凝らされた。胸当て式のエプロンを舞台に見立ててポケットから人形を取り出して演じる人形劇「エプロンシアター」、キッズビクス、子どものストレスケアと親子の相互信頼関係を高めるための「キッズトリートメント」も紹介された。

子供の自立@(幼児期、低学年編)分科

1000人のオモニを対象に行われたアンケート調査を基に意見交換(西日本)

 4〜8歳の幼児を持つ母親と地域ごとの子育てサークルに関心を寄せる女性たちを対象に開かれた。子育て真っ最中の母親たちの現状と意識を分析し、今後の課題と対策などが話し合われた。

 分科会では、各地の同胞子育てサークルに参加している1000人の母親たちを対象に7〜8月にかけて行われたアンケート調査に基づき、さまざまな意見交換がなされた。アンケート結果によると、子どもが「民族」を意識する年齢は平均7.48歳。きっかけは@朝鮮学校、幼稚園への入学、入園、A日本人からの差別、B両親の姿から、C民族衣装を着て、D名前の順だ。

 会場からは、田舎で暮らしているため同胞が少なく、学校も、幼稚園も、同胞の子育てサークルもない現状を嘆く声や、排他的な日本社会で子どもを朝鮮人としてのびのび育てる方法についての悩みも寄せられた。参加者たちは「子育て中の日本の母親と仲良くし、厳しい情勢の中でも安全な育児環境を整えるべき」「オモニ自身が自信を持って子どもに接し、ウリナラのこと、民族のことを家庭教育の中でしっかり伝えていく必要がある」などとアドバイスしていた。

子供の自立A(中、高生編)

 青年期の子どもたちに対する家庭教育、母親の役割の大切さを再認識するのが目的。朝高生500人を対象に自分の母親の良い点、改善してほしい点を調査した結果が発表された。また、高3の学年主任として進路指導に携わっている東京朝中高の康景翊先生が、「『子どもの進路』学校ができること、家庭がやるべきこと」と題して講演した。

 朝高生たちのアンケート結果によると、良い点としては、@毎日おいしい弁当を作ってくれるAいつも明るくパワフルB勤勉C気持ちをよく理解してくれる−などが挙がった。改善してほしい点は、@干渉しすぎA他人の言うことをよく聞かないB怒る時にしつこい−など。

 場内のオモニたちから好評だったのが康先生の講演だ。生徒たちと毎日のように接しているだけに、彼らの気持ちを十分に理解したうえでの提案は説得力があった。

 康先生は、高校生という青年期に内面をうまく解決してあげることが大切だとして、「自立、信頼、連帯」が「依存、不信、孤独」に勝るように導くべきだと指摘した。

 その前提に立って、現在の進路を取り巻く環境、学校での進路指導、家庭における課題などについて語った。高1は個性を育てる、高2は人生の目標を設定する、高3は具体的準備をさせる−のが基本的指導方針。朝高生の進路状況は、朝大、日本の大学、専修学校を含め進学率が就職率より勝っているという。

 最後に、家庭と学校、地域社会が協調しながら進路指導をしていくべきだと強調した。

思春期分科

 何かと問題になっている思春期の子どもを抱える母親たちの分科会では、グループワーク形式を導入して、子どもの反抗、異性との交際などについて意見交換が行われた。

 グループごとにアドバイザーを置き、6人1組となって行われたフリートークでは、母親自身が思春期だった頃を振り返り、当時の状況と心境などを語り合った。

 「1世の父は10代で日本に渡ってきた。くず鉄の仕事をしていた母は朝から晩まで働きづくめ。そんな両親の背中を見て育った私は比較的まじめな方だった」「田舎育ちで中学までは純朴だった。しかし、高校に入ると大人びたことをしたがった。家から朝高までは片道2時間。今思えば自立しようとする意思の表れだったのかも」

 参加者たちは自身と子どもたちの姿を重ね合わせていた。

 朝鮮大学校教育学部の慎栄根教育学講座長は「子どもを過信するのはよくない」としながら、インターネットやメールなど、オモニたちが思春期の頃には存在しなかったものが手の届くところにあると指摘。

 「思春期は大人になるための寄り道。心と体の変化にいら立つ子どもに付き合う姿勢と、彼らが発するメッセージをしっかり受け止め、大人からのメッセージを伝えることが必要だ。大切なのは人とのつながり。子どもが最後の一線を越えないのはこの関係にあると思われる」と話していた。

福祉分科

 福祉に対する正しい認識を持ち、同胞障害者とその家族たちと話し合い必要なものが何なのかを知ろうという目的で行われた福祉分科会では、在日同胞福祉連絡会事務局の林瑛純さんがムジゲ会、福祉連絡会、音楽サークル「Tutti」のボランティア活動など、在日同胞社会におけるこれまでの福祉活動の流れを説明した。

 林さんは、「ムジゲ会」結成から今年で9年目を迎えたと話しながら、地域学習会、家族たちの触れ合いなど心のバリアフリーを進める活動が重要だと述べた。

 また、@同胞たちが障害者に対して正しい認識を持つ活動A同胞生活相談綜合センターの機能を高め、障害者問題に対して組織的な活動を行っていくべき、などの課題を挙げた。

 障害児を持つオモニや他の参加者らの発言では、「朝鮮学校に入学する権利をもっと与えられるような環境作りを整えてほしい」「障害者に対しての偏見をなくすためには共に学びあうことが大事だ。わからない事は罪だと思う」などの発言があった。

 全盲の梁進成さんは、「自分は朝鮮学校に行けなかったが、今でもできるなら朝鮮大学校に行きたいと思っている。福祉に関しては複雑な問題が多いが、福祉活動に携わりながら一つひとつ解決させていきたい」と語っていた。

オモニ会分科

 オモニ会が共通して抱えている悩みや問題点を挙げて幅広く意見交換を行うことで他校の経験からも学び、オモニ会をバージョンアップする契機にしようというのが目的。事前にオモニ会のある68校を対象に悩みや問題点を調査し、それに基づいて設定されたテーマに沿ってディベートを行った。

 テーマは、@バザー準備委員会はオモニ会だけで構成するかAオモニ会を卒業しても地域の母親として学校を助けるかBオモニ会の集いに校長先生、もしくは学校側から参加者がいるか、の3つ。このテーマに沿って司会者が投じる質問に、○×で答え、その根拠について意見を交わす方式で進められた。

 「やはり昨年の9.17以降はバザーをやっても日本市民の入りが少なくなり、売り上げが伸びない」「備品を集めるのが大変」「アボジたちをもっと巻き込むべきだ」「売れ残った品物は結局オモニ会の役員と教員たちが買わされるので、2重の負担になる」など、日ごろ抱えている問題点が次々と提起された。

 参加者の間からは、「オモニ会だけでなく全機関あげて取り組めば違ってくるのでは」などの提言などがあった。

 ディベートを通して、参加者らは生徒たちのために朝鮮学校が必要であるし、そのためにもオモニ会のメンバー自身が民族教育の良さをより感じられるようにすべきだ、オモニ会のネットワークを強化していくべきだ、などの結論に達した。

民族教育権利分科

鈴木孝夫弁護士と人権協会金東鶴部長の切れの良いトークに笑顔を見せるオモニたち

 ここでは、埼玉県での民族教育の取り組みに関するアンケート調査報告、鈴木孝夫弁護士と在日本朝鮮人人権協会の金東鶴部長がそれぞれ提言を行い、参加者同士による意見交換がなされた。

 鈴木弁護士は、「この日本において、朝鮮学校の子供たちがいかなる困難をも乗り越えていくには朝鮮の文化をしっかり受け継ぐことが大切だ。それを基にして子供を育てることに意義がある」と述べた。

 「行政は女に弱い!」とオモニたちの笑いを誘った金部長。「今、オモニたちにできることは民族教育の権利獲得のために行政、日本政府に訴え知らせていくこと。また、そのためにも日本社会や制度についてしっかりと知るべきだ。運動を継続的にすることの重要さも実感してほしい」との提言がなされた。

 朝鮮学校の教員は、「民族教育の権利はあたり前の権利であると訴えるのがとても重要だ」と述べた。また、子供を朝鮮学校に通わせるオモニは、「民族教育は家庭から始まるもの。学校だけではなく、家庭でもしっかり育てることが大切」など、建設的な意見交換がなされた。

[朝鮮新報 2003.11.11]