同胞結婚相談所−中部センター金順愛所長の一日 |
同胞同士の民族結婚を1組でも多く実現させようと東奔西走する同胞結婚相談所の所長らスタッフたち。その中の1人、同胞結婚相談中部センター愛知同胞結婚相談所の金順愛所長(60)の一日を追った。 その日のうちに 「アンニョンハシムニカ(おはようございます)、相談所の金順愛です」
午前9時、事務所に出勤と同時にチョンシル・ホンシル会員に電話をかけることから、金所長の一日は始まる。 「どんなタイプが好みですか」「ウリハッキョ(朝鮮学校)出身者がいいのかしら」「職業は。サラリーマンはどうですか」。ソフトな口調で話を進めていく。相手も話したいことが多いようで、ついつい長話に。電話で話しながら、コンピューターで合いそうな相手をピックアップ。相手の反応を確かめる。その間にも携帯電話につぎつぎと着信が入る。 「午前中は電話の応対で追われます。やはりチョンシル・ホンシル会員からの相談事が多いですね。こちらからかける方が多いかしら。その日連絡を受けた件に関してはその日のうちにすべて折り返し連絡するようにしています」 ソフトなだけでなく相手の気持ちになっての応対ぶりは見事としかいいようがない。 会員だけでなく、他の地方の相談所、センターからの電話も。同胞結婚相談所では、会員の理想に適う相手を探すために各地方の相談所同士の連携も深めているからだ。近県はむろん、北陸や関西地方まで問い合わせることもある。しかし、忙しさはまったく感じさせない。声のトーンひとつ変えず、一つひとつ丁寧に応対している。 土、日、祭日も 取材に訪れた日は、午後から結婚式の打ち合わせが名古屋市内のホテルで行われた。
1週間後に結婚式を迎える両家とあいさつ。ホテル関係者、当日の司会者なども交わっての長時間の打ち合わせが続いた。この場合もまず相手の立場を尊重する。「あくまでも両家が満足するように持っていくのが一番」と金所長。 シネン(嫁入り=新婦が嫁ぎ先に正式に入る儀式)の付き添いを頼まれることもある。シネン自体を知らない場合はそういう風習があることを教え、「やりたい」と言えば付き添いを買って出ることもある。「しかし、決して無理強いはしない」(金所長)。 一般の人が休む土、日、祭日は金所長にとっては最も忙しい時。この時にお見合いが設定されることが多いからだ。そんなこんなで1年中休む暇もない。 しかし、金所長はとても楽しそうだ。「もう感動の連続。出会いをもたらすことに喜びを感じます。婚約が成立すればなおうれしいし。ある人に天職だと言われたけど、自分でもそう感じます」と笑う。 結婚を成就させた人から、兄弟姉妹について頼まれることもある。 「秘密厳守」が原則 そんな金所長が必ず守っている原則がある。「秘密厳守」。結婚という最もプライバシーにかかわる問題で、少しでも話しが漏れることがあれば信用問題にかかわる。広いようで狭い同胞社会だからこそ、気をつけねばならないとの思いは強い。自分がかかわった相手には、公の場では相手が来ない限り話しかけない徹底ぶりだ。 そんな金所長だからこそ、会員のみならず家族が信頼を寄せてさまざまな相談を持ちかけてくる。 取材当日、打ち合わせを終えた金所長は再び事務所に戻り、理想の相手同士をピックアップしてコンピューターマッチングを行ったり、会員からの手紙に目を通したり。この日も事務所の電気は夜遅くまでついていた。(文聖姫記者) [朝鮮新報 2003.10.27] |