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同胞法律・生活センター連続講座始まる−1回目のテーマは国籍

 いまや3世が趨勢を占め、4、5世まで誕生している在日同胞社会。価値観も多様化し、抱えている問題もさまざまだ。とは言え、国交正常化をはじめとする朝・日間の問題、祖国の分断という事実に、世代交代を経ても変わることのない在日固有の問題を抱えている。NPO法人同胞法律・生活センターでは、こうした現状下で同胞の生活をサポートし、役立つ情報を提供する目的で連続講座「在日コリアンのための知って得する暮らしの法律」を月1回、東京上野の同センターで開催することになった。9月20日に行われた1回目のテーマは「国籍」。同センターの金静寅事務局長が講義した。講義をもとに、国籍に関しておさえておくべき事柄をいくつか説明してみたい。(金明c記者)

本国の法律によって

 まず、在日同胞の国籍を考える前に、「国籍」の定義についてよく知ることが大切だ。

 1930年の「ハーグ国籍条約」(1、2条)では「人の国籍はその国籍があるとされる国、すなわち本国の法律によって決める」と明記されている。したがって、在日同胞の国籍は日本の国籍法や外国人登録法で決められるものではない。

丁寧に説明する金静寅事務局長

 次に在日同胞が持っている外国人登録証の国籍欄に「朝鮮」、「韓国」と記載されていることについて。

 外登上の「朝鮮」表示=「朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)」、「韓国」表示=「大韓民国」の国籍を持つと理解している人が少なくない。

 だが、「国籍欄の記載は必ずしもその人の国籍であるとは限らない」ということをしっかり押さえておくべきだ。

 では外登上の国籍欄の記載は何を意味するものなのか。

 「朝鮮」、「韓国」表示は日本によって2つに分断されたものだ。日本政府は「韓国」表示だけを国籍として取り扱い、「朝鮮」表示については「符号」とみなした。よって在日同胞の国籍に関しては一律に韓国国籍法だけを適用するという措置がとられている。これが重要なポイントだ。

 国籍の相談が多い要因としては、@本国が南北に分断されているという現実A日本と南北朝鮮双方との政治関係B外国人登録による国籍欄の差別的な分断表示―が上げられる。このようなことが在日同胞社会や帰属意識までも分断しているのが現状だ。

外国人登録を統一の表示に

 在日同胞の国籍は、その人が本国と考える国の法、すなわち共和国国籍法、韓国国籍法によって決められる。

講義に耳を傾ける参加者ら

 北南の両国籍法とも、すべての在日同胞は朝鮮籍、韓国籍を持つと規定されているので、共和国、韓国の2つの国籍法により、法律の解釈上は「朝鮮」、「韓国」の2つの国籍を併せ持っていることになる。したがって、国籍取得や喪失などの問題は、南北の両国籍法の適用を受ける。

 ここで整理をすると、外国人登録上の記載が「朝鮮」、「韓国」のいずれの記載であっても両方の国籍法によって二重国籍状態になる。

 しかし、これは分断国家である北南朝鮮が互いに正統性を主張して、一方の国家を「認めない、存在しない」ということが前提で生じる結果である。2重国籍状態というのも「分断」という政治状況によるものなので、実質的には二者択一を迫られるのが現状だ。

 金事務局長は在日同胞にとって望ましい状況を大きく次の3つに分けて挙げた。

 @日本政府による共和国の国籍法の承認A重国籍状態であることを認め、外登を統一の表示にすることB国籍の判断については、帰属意識や所持する旅券、国籍証明などにする。

 第2回目は10月18日。テーマは「相続問題」。

日本人との結婚で子どもの国籍は?

 金静寅事務局長は「在日同胞と日本人の国際結婚は、同胞同士の婚姻数をはるかに上回るようになった。センターに寄せられる国籍相談は、もっぱら日本人との婚姻を原因としている」と話す。講座では国際結婚で子の国籍に関する事例が元に説明が多くなされた。国際結婚のケースはさまざまあるが、抑えておくべきポイントを紹介する。

 1、在日同胞と日本人との婚姻により出生した子の国籍は、共和国、韓国、日本の3つの国籍法によって決定される。この3つのいずれの国も父母両系血統主義をとっているので、生まれてくる子は朝鮮、韓国、日本の国籍を重ねて持つようになる。

 2、しかし日本政府は、「未承認国である」という理由から、共和国の国籍法を認めず、朝鮮表示の同胞たちにも一律に韓国国籍法を適用して、在日同胞の国籍問題を処理している。

 3、在日同胞と日本人との間に生まれた子の国籍は、朝鮮あるいは韓国と日本の重国籍となる。しかし、日本の国籍もあわせ持つことから、日本国民として一方の日本人の親の戸籍に子として記載され、日本人の親の性を名乗ることになる。

 4、子の戸籍を朝鮮表示あるいは韓国表示にさせるためには、日本国籍の離脱手続きを行う必要がある。

 5、4の国籍離脱手続きをしない場合でも、子は22歳までに国籍選択−あるいは韓国表示か日本国籍か−を行わなければならない。

 ※重国籍になった時がすでに20歳に達した後であるときはその時から2年以内にいずれかの国籍を選択しなければならない。(同胞法律・生活センター編「知って得する同胞の暮らしの法律」シリーズ@国籍参照)

[朝鮮新報 2003.10.1]