〈ざいにち発コリアン社会〉 よしもとザ・ブロードキャストショウ所属女優の金智順さん |
テレビドラマや映画、舞台の未来のスターを育てるために吉本興業株式会社が旗揚げした演劇集団「よしもとザ・ブロードキャストショウ」。現在、同劇団のメンバーとして数々の舞台に出演し、映画やモデル、テレビドラマなど幅広い活躍をしている金智順さん(21)。芸名は「ちすん」。「舞台は今自分が一番輝ける場所。いろんな場所で在日であることをどんどんアピールしていきたい」と語る。 18歳の時に転機 金さんは、北大阪朝鮮初中、大阪朝高で朝鮮舞踊を続け、朝高時代には毎年、通信生として平壌で専門的に習った。「学生時代は朝鮮舞踊漬けの毎日だった」という。 卒業後は朝鮮舞踊を踊る場もなく、短大の服飾科に進学。好きだった服飾デザインを学び、ごく普通の日々を過ごしていた。ところが、6歳から続けてきたクラシックバレエが転機をもたらした。 バレエスタジオの公演に出演していたところを、偶然その技量が吉本興業関係者の目にとまりスカウトされた。その後、同劇団所属のアクターズ&タレントスタジオ研究科を修了し、同劇団のオリジナルメンバーに昇格した。 「最初は、どういう世界かなと、興味本位で入った部分が正直あった。だから、稽古なんかで舞台経験者との力量は歴然としていて心配にもなった。一昨年の『ウォーアイニー』という研究生公演で舞台の魅力を全身で感じ取った。おもしろさを発見したのはそこからです」 共に入団した同劇団の一期生は12人で、現在残っているのは金さんを含めわずか2人。「これって負けず嫌いな性格だから残れたのかも」と笑顔を見せる。そんな持ち前の根性と努力でこの間、出演したいくつかの舞台では主演を務めるほどに成長した。 今年4月19日、国際交流基金フォーラム(東京赤坂)で行われた日韓合同公演 「島−isle」(制作:金相秀)では、見事主演を務めた。 「この舞台ではウリマルを話せるのが強みとなった。4人で出演した舞台で、3人は日本人。監督が言わんとする細かなニュアンスを理解できたからこそ、主演を務めることができたと思う」 「中身のある役者めざす」 「舞台で『何かを表現する』ことがとても好き。観ている人に作品のメッセージをしっかりと伝えていくことは、朝鮮舞踊も演劇も変わらない」と話す。 人よりも高い位置にある舞台に立ち、脚光を浴びて演じることの喜びを表現し、それをしっかり相手に伝えることは朝鮮舞踊で培われたものだという。それがプラスとなり、「いろいろな場面でうまく生かされていると感じる事が多い」。 「舞踊も演劇もやることは違っても、『自分の世界』に入りきる部分はとても共通していると思う。朝鮮舞踊の舞台経験は本当に役に立っています」 劇団ではすでにリーダー的存在の金さん。幅広い演技力を身につけるために、「すべてさらけ出して、裸の自分になれるように」と心がけ稽古に励む。 今後はどんなジャンルにも通用する中身のある役者を目指し、テレビや映画にも挑戦していきたいという。来年1月には、新人俳優の登竜門ともいえる戦隊シリーズにレギュラーでテレビ出演することも決まった。 「『ちすん』って名前を見ると在日だってすぐ分かると思う。隠すつもりはないし、今はそうやって自己をアピールできる時代。在日が活躍できるってのを全国に知らせていきたい」(金明c記者) [朝鮮新報 2003.9.24] |